文部科学省は2020年5月8日、教材や学習動画の作成・活用にあたっての留意事項を各教育委員会へ通知した。教育委員会が主体となり教材や学習動画を作成する際には、引用の範囲で著作物の内容をもとに教材や指導内容を構成するよう促している。 「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」において全国が対象地域に指定され、臨時休校の実施状況は9割を超えている。遠隔授業のニーズに対応するため、改正著作権法第35条の施行による「授業目的公衆送信補償金制度」が当初の予定から早まり2020年4月28日に施行された。これにより、たとえば、予習・復習・自宅学習用の教材をメールで送信することや、リアルタイムでのオンライン指導やオンデマンドの授業において、講義映像や資料をインターネットで児童生徒に限り送信することが可能となる。 ただし、学校で授業を担当する教員ではなく、教育委員会が主体となって教材や学習動画を作成し、域内の児童生徒に配信する場合は、「授業目的公衆送信補償金制度」の対象外であり、原則として個別に権利者の許諾を得る必要がある。そのため、教育委員会が主体となって教材や学習動画を作成する際には、著作権に配慮し、基本的に、引用の範囲で著作物の内容をもとに教材や指導内容を構成するなど工夫してほしいとしている。 もし、引用の範囲を超えた著作物の利用が必要な場合には、関係の著作権等管理事業者などに問い合わせること。また、利用にあたっては、臨時休校が終了し、教育活動が通常どおりに実施できる状況になった学校に対しては、各教育委員会からの動画配信は停止するなど、著作権者の利益を不当に害するような利用が行われないよう配慮を求めている。 なお、文部科学省は、ICTを活用した遠隔授業で教科書などの著作物を円滑に利用できるよう、各教科書発行者や著作権管理事業者へ5月7日付で通知した。新型コロナウイルス感染症の流行に伴う教育現場の状況を踏まえ、臨時休校中に、教育委員会が主体となって学習動画を作成し、域内の児童生徒に限定して配信する場合には、教科書や教科書に収録された個々の著作物を「授業目的公衆送信補償金制度」の要件を満たして利用することについて配慮するよう、文部科学省は各教科書発行者や著作権管理事業者へ要請している。