東京科学大学(Science Tokyo)は2026年4月1日、学内のAI研究者を結集した研究拠点「AI-Science Nexusセンター(AISNeC)」を設立した。大規模言語モデル(LLM)の開発をはじめとするAI基盤研究と、AIを活用した学際的な科学応用を一体的に推進する。
センターの正式名称は「AI-Science Nexus Center(AISNeC)」。設立日は2026年4月1日。センター長には篠田浩一氏(情報理工学院教授)が就任した。副センター長(SofAI)は荒瀬由紀氏(情報理工学院教授)、副センター長(AI4S)は高地雄太氏(総合研究院難治疾患研究所教授)が務める。
おもな研究分野は、AI基礎理論、生成AI・言語モデル、AI基盤技術、人間社会AI、生命・医科学AI、材料・化学AI、エネルギー・環境AI、AIシステム・高性能計算、数理・基礎物理AI。同センターは新産業創成研究院に設置され、「次世代半導体エコシステム共創センター」と連携し、融合研究の成果を社会実装へとつなぐ役割を担う。
生成AI技術は近年急速に進展しており、その研究開発には理論・アルゴリズム・計算機アーキテクチャにまたがる高度な連携が不可欠。米国や中国では大規模な研究体制のもとで開発が進められている一方、日本の大学では研究が研究室単位に分散し、十分な連携体制が構築されていないのが現状。その結果、国際会議における日本の存在感は相対的に低下しており、政府は近年、AIを国家戦略技術と位置づけ、投資を拡充している。
東京科学大学は、産業技術総合研究所との連携によるLLM「Swallow」の開発、高品質な医療データを含む多様な科学データの蓄積、GPUクラスタ「TSUBAME」に代表される計算基盤など、世界水準の研究ポテンシャルを有する。しかし、これらの資源は学内で分散しており、十分に活用されているとはいえない状況にあった。また、日本では若手AI研究者の待遇が国際水準に比べて低く、優秀な人材の流出が課題となっている。
同センターでは、AIそのものを深化させる「Science of AI(SofAI)」と、AIを科学に応用する「AI for Science(AI4S)」を有機的に結びつけることで、研究開発の加速と新たな学際領域の創出を目指す。
SofAIでは、LLM「Swallow」の開発をさらに発展させるとともに、基礎科学に基づく次世代AIの研究開発を推進する。AI4Sでは、医療、創薬、材料、エネルギー、ロボット、数理など幅広い分野においてAI活用を推進する。特に附属病院の医療データを活用した医工連携を重点分野と位置づけている。
これらの研究は、GPUクラスタ「TSUBAME」を中核とする計算基盤のもとで実施される。オープンラボラトリとして研究者が柔軟にチームを編成し協働する環境を整備し、AI研究のハブ機能を担う。
人材育成の面では、博士課程学生やポスドクなどの若手研究者への支援を強化し、自由かつ創造的に研究に取り組める環境を提供する。公的研究機関や企業とのクロスアポイントメント制度を活用し、研究と教育を一体化した人材育成拠点を形成する。さらに、学部教育におけるデータサイエンス・AI教育を統合し、社会人のリスキリングを含む高度AI教育を展開する。加えて、AI倫理、知的財産、著作権、データプライバシーへの対応体制を整備し、研究者が安心して研究に専念できる環境を構築するとしている。
今後、AISNeCは研究推進、人材育成、産学連携、国際展開を一体的に推進し、学内資源を統合したAIエコシステムを構築する。AIを軸に科学のあり方を再定義し、新たな産業創出を目指す方針だ。







