経済産業研究所(RIETI)は2026年2月、埼玉県の公立小中学校を対象に、極端な気温が子供の不登校にあたえる影響を分析した研究成果を公表した。分析の結果、前年に極端な高温日および低温日が増加することで、学校・学年あたりの不登校者数が増加することが明らかになった。
本研究は、極端な気温が小・中学生の不登校にあたえる影響を定量的に検証したもの。埼玉県の公立小・中学校に在籍する児童・生徒のパネルデータを用いて、おもに気温が不登校にあたえる影響を検証したほか、学力や非認知能力、いじめ、暴力行為といった行動との関連性について包括的に分析した。
研究には、文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」や「埼玉県学力・学習状況調査」と、日別気温データなどを組み合わせた独自のパネルデータを用いた。極端な気温の定義については、最高気温を指標とし、「極端な高温」を32°C、「極端な低温」を8°Cとし、2016年から2019年までの4年間のデータをもとに、それらが不登校児童生徒の割合にどのような影響を及ぼすかを統計的に検証した。
分析の結果、極端な高温と低温の両方が不登校を有意に増加させることが明らかになった。32℃を超える日が1日増加すると学校・学年あたりの不登校者数は約0.0150人増加、8℃を下回る日が1日増加すると約0.0182人増加したという。埼玉県内の公立小学校が約800校、中学校が約300校であるから、前年よりも1日高温の日が増加すると、県全体で100人に近い児童・生徒の不登校増加が生じる計算となる。特に、高温および低温による不登校者数の増加は、中学生で顕著にみられたという。
また、気温による影響は「無気力・不安」を主因とする不登校に集中していることがわかった。病気による欠席、いじめや暴力行為には有意な影響が観察されなかったことから、極端な気温が身体的健康よりも心理的・精神的健康に影響し、防衛的・回避的行動として不登校を引き起こすことを示している。さらに、学校に設置された空調(冷房)は、特に極端な高温による負の効果を60~70%程度相殺する効果があることも示された。
RIETIは、気候変動が進行する中、学校施設の環境改善が教育の機会均等に関わる問題につながることを示唆している。特に、空調設備の整備と適切な運用、断熱性能の向上などのハード面の対策に加え、極端な気温時の心理的サポート体制の構築といったソフト面の対策も必要だとしている。気候変動は教育格差を拡大させる新たな経路になり得るとして、教育への影響を包括的に評価する必要性があるとした。
今回の研究は、埼玉県のデータに限定されており、他地域への一般化には注意が必要だとしている。今後は、全国規模でのデータ分析や、不登校の長期的影響の追跡、効果的な介入策の開発と評価など、環境要因が子供の発達と教育にあたえる影響を包括的に理解し、エビデンスに基づく対策を講じることが、持続可能な教育システムの構築に不可欠だとした。








