タグチ現代芸術基金は2025年11月15日、約750点の現代アート作品を活用した「デリバリー展覧会事業」の2026年度開催校の公募を開始した。関東8県の小中学校を対象に、学校まで作品を届けて本格的な現代アート鑑賞の機会を提供する。
デリバリー展覧会事業は2021年度から実施されており、現代アートの鑑賞機会が限られがちな地方や次世代を担う子供たちのもとへ、所蔵作品による本格的な展覧会を届けることを目的としている。
現代アートについて「わからない」「むずかしい」と感じる人は少なくないが、同時代を生きるアーティストの多様な表現は、いま世界で起こっている出来事への応答であり、私たちが世界とつながるための「窓」でもあるという。この「わからない」に向き合い、自分なりに考えようとする姿勢こそが、不確実性の高まる社会を生きていくうえで重要な力になるとしている。
デリバリー展覧会では、絵画、彫刻、写真、映像といった表現手法も、作家の国籍や時代もさまざまな作品を鑑賞する。作品の背景にある「作家が生きた環境」や「文化」「価値観」を想像することで、世界には多様な視点や考え方、社会課題が存在することに気付く。
また、対話を通して、同じ作品でも人によって感じ方が異なることを体験することで、「違いを尊重する姿勢」が自然と育まれる。ここには正解・不正解はなく、自分の考えを大切にしながら、他者の意見に耳を傾ける力が養われるという。
都市部と地方の文化格差や、経済的環境による子供の体験格差が課題となる中、同事業は、そうした状況に対するユニークな試みともいえる。個人コレクションだからこそ、所蔵作品を柔軟に活用して実現できるアートを通じた「新たな学びのかたち」を、多くの子供たちに体験してもらいたいとしている。
タグチアートコレクション共同代表の田口美和氏は「現代アートは、特別な予備知識がなくても子供たち自身の感性で鑑賞することが可能です。子供たちの純粋で身構えない目は、1度の体験であっても、大人よりずっとたくさんのことを発見しています。子供時代にアートに接する価値は無限大です」とコメントしている。
応募対象は栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県・神奈川県・千葉県・山梨県・静岡県内の小中学校。学年単位での応募や近隣2校による共同開催も可能。募集期間は11月15日から2026年3月31日まで必着。開催期間は2026年10月1日から2027年3月31日まで。費用は無償。
応募に必要な書類は、応募用紙(タグチ現代芸術基金のWebサイトよりダウンロード可)、時間割と展示希望スペースの図面・写真。応募方法は郵送またはメールで受け付ける。
なお、デリバリー展覧会に関心をもつ教職員・報道関係者を対象に、事業内容をより深く理解してもらうためのオンライン説明会を12月19日午後4時から午後5時まで開催する。参加費は無料で、申込受付は12月18日午後3時まで。










