学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第245回のテーマは「居残りのせいで習い事に行かれなかった」。
居残りは減少傾向に
夏休みが終わり、2学期が始まりました。2学期はさまざまなイベントが多い時期でもあります。そういった時期に問題になることがあるのが今回のテーマである「子供の居残り」です。私が小学校で採用された約30年前の感覚では、学校に子供を残して何かに取り組むということはそれなりにあったように記憶しています。現在は、居残りなどをさせることは、かなり少なくなってきているように思います。
私の小学校教員の経験では、居残りで練習などを行っていたものは、運動系、文化系のどちらもありました。自治体の連合運動会などに向けた選手の練習、音楽や書写の大会に向けての練習などがありました。特に埼玉県の学校では、書写についての取組みが非常に熱心でした。春には硬筆、冬には書き初めの大会がありました。学内で選考会があり、選手に選ばれると放課後に練習会に参加し、期間内にできあがった作品を地域の展覧会に提出し、そこで入賞すると県の展覧会に出展するという取組みがありました。そういった行事などに関するものだけでなく、日常の学習、仕事、指導などによる居残りもあります。
安全を意識して下校時間をそろえる
ただ、現在の社会状況においては、子供を残して何かに取り組むということは減らす(無くしていく)方が良いのだと思います。近年、下校の際、同じ方向の子供はまとまって(同じタイミングで)帰るように取り組んでいる学校が多いです。これは下校時の「安全」を意識しての取組みです。小学校の場合、登校時間はほとんどが同じ時間です。それと比べて、下校時間は学年によって違いがあります。そういったこともあり、下校時は子供がバラバラになりやすいです。犯罪に巻き込まれる可能性なども登校時よりも高くなります。そういったことを少しでも減らすために、先ほど書いたようにできるだけまとまって下校をするという取組みをしています。その時間に合わせて地域の方も通学路の見守りをしてくれていることが多いです。
学校以外の生活について想像しながら子供と関わる
このように下校時の安全についての意識が高まっている状況では、何らかの理由があるにせよ子供を学校に残らせて何かをさせるということは積極的に取り組むべきことではないでしょう。タイトルにもあるように、子供を学校に残したことで習い事に行かれなかったということは避けるべきです。
また、習い事には、その都度の費用がかかっています。習い事にも毎回の予定があるはずです。学校の教員は、どうしても「学校を一番(中心)」に考えがちです。子供や親にとっては、学校以外にも、関わっている世界があります。教師の意識の中には「学校を優先すべき」というがある人もいます。そういった意識では、さまざまな形で親と意見の相違が生じてしまうでしょう。学校は大切ですが、学校だけが子供の学びの場・成長の場・生活の場ではありません。教師は、子供の学校以外の生活についてもきちんと想像しながら、子供と関わっていきたいです。
本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
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