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【先生の事情とホンネ】教育現場のリアルな自腹事情

 教育現場で日々奮闘されている先生へ。リシードは、現役の小学校教諭である松下隼司氏による連載「先生の事情とホンネ」を毎月掲載している。第2回のテーマは「先生の自腹」。

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 教育現場で日々奮闘されている先生へ。リシードは、現役の小学校教諭である松下隼司氏による連載「先生の事情とホンネ」を毎月掲載している。文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞した経験をもち、教育書の執筆も手掛ける松下教諭が、日々どのようなことを考えて子供たちと向き合っているのか。授業や教室運営の工夫を紹介するほか、未来を担う子供たちの教育に携わる「教員」という仕事の魅力も発信していく。

 第2回のテーマは「先生の自腹」。リシードでは3月に「自腹」に関するアンケートを実施した。103件の回答のうち、「自腹をしたことがある」と回答した先生の割合は100%。本記事では、教師歴23年の松下教諭の自腹事情や「買って良かった」自腹アイテムを紹介する。

最低1か月に1回の「自腹」

 自腹を切って、仕事に関する物を購入したり、教師のセミナーに参加したりしてきました。多い年は、100万円以上の給料を仕事のために費やしたこともあります。教師になって23年目、仕事のために自費で何かを購入したり、学びに行ったりしなかった年は、これまで1回もありません。思い返せば、最低1か月に1回は、仕事のために何かしら自腹を切っています。

他の人には聞けない先生の自腹事情

・どれくらいの割合の先生が、仕事のために自腹を切っているのかな?
・どんな仕事アイテムを自腹で購入しているのかな?
・仕事のために、どれくらいの金額を自腹で購入しているのかな?
・自腹で購入して良かった・後悔した仕事アイテム物は何かな?
・仕事のために自腹を切ることについて、どう思っているのかな?

 親しい先生にも仕事のために自腹を切ることについての事情と本音は、なかなか聞けないものです。そこで、「先生の自腹」という記事テーマにあわせて、リシードでアンケートを実施しました。

仕事のための自腹についてアンケート結果




 どんな職業でも多かれ少なかれ、仕事のために自分のお金で何かを購入することはあるかと思います。ただ、教師という職業は「大切な子供たちのために」という思いがとても強いです。だから、自腹の頻度も費用も多くなります。

 私も、わが子のために購入する本より、学級の子供たちのために購入する本のほうが多い年もあり、家族に申し訳なく思います。

自腹は前向きに!高コスパアイテムを紹介 

 「仕事のための自腹」を後ろ向きに考え出すと、どんどん気持ちが重たくなります。そこで、前向きな気持ちで「先生の自腹」について舵を切ります。コストパフォーマンスが高かった、自腹で購入して良かった物と、最近購入した自腹アイテムを紹介します。

コードレスの掃除機(充電式)

 15年ほど前、日曜参観の代休で学校が休みの日に、大阪から長崎の公立小学校の先生の授業を参観しに行きました。もちろん自腹です。放課後に教室をコードレス掃除機を使ってきれいにしている先生の姿を見て、「いいな」と思いすぐに購入しました。1万円ほどのコードレス掃除機ですが、購入して大正解でした。

 家庭訪問や期末個人懇談会がある期間は、給食後、子供たちは掃除をせずにすぐに下校します。期末個人懇談会では、教室で保護者と話します。教室の汚れが気になるときに便利なのがコードレス掃除機です。ほうきで掃くよりも、短時間で、きれいになります。

 コードレス掃除機を購入するまでは、子供たちに「自分で出したごみは、自分でちゃんと捨て! まだ、ごみが落ちてる!」と、つい厳しく言うことがありました。コードレス掃除機の購入後は、気持ちに余裕がもてたので、子供たちにも優しく対応できるようになりました。

 教室で図工の時間に紙工作で紙を切ったり、理科の実験道具を組み立てたりしたときに出た小さなごみの掃除も簡単です。今の勤務校では毎週木曜日に掃除がありませんが、コードレス掃除機のおかげで教室を清潔に保てます。

作文の添削はんこ

 昨年度、自腹で購入した仕事アイテムは「作文用の添削はんこ」です。子供がノートや原稿用紙などに、文章を書いて作文指導をすることがあります。事前に、全体指導で「文章の書き始めは、1マス空けるんだよ」「段落を変えたときも、1マス目は空けてね」「かぎかっこの中で、改行したときは、最初の1マス目は空けてね」と、黒板に書いて説明しても、1マス空けをしないで上に詰めて書いてしまう子供がいます。

 子供が書いた文章に手書きで「1マス空け」と毎回書くのは、ものすごく労力がかかりましたが、ハンコを使うとその労力が大きく減ります。「行をかえましょう」「行をかえません」も購入しました。作文に赤ペンで矢印で記号を書いても子供には伝わりにくく、「話し言葉、会話文で書いたかぎかっこの下には、文章を書かないよ。行をかえてね」「1文1文、行をかえないでね」という言葉がけは、これまで何回してきたかわからないほど多いです。

 子供の連絡帳やノート、テストを見るとき、書いた内容だけでなく、文字の丁寧さも見るようにします。ただ、見る時間をとれないことが多いです。保護者からも、「先生、もっと丁寧に字を書くように指導してください」とお願いされることがあります。

 このハンコだったら、ポンと一押しです。これまで、イライラしながら個別指導で「ていねいに書きや!」と言ったり、書いたりしていましたが、それも解消されます。もちろん、丁寧に書けている字を褒めることは欠かしません。紹介したハンコは、先生向けのハンコを取り扱っているオンラインショップで見つけました。

23年間の教師生活で、コツコツとハンコを自腹で購入

 担任する教室にある教師机の引き出しを開けると、子供のノートに押すための確認ハンコやご褒美ハンコがたくさんあります。ハンコでいっぱいの引き出しを見て驚く子供たちの表情を見るのが大好きです。ハンコが子供たちとの会話のきっかけになることもあります。

 「買って損した」という失敗もたくさんしました。仕事アイテムの自腹購入による後悔は減らしたいと考えています。今回紹介した「先生の自腹」についてのアンケート結果や仕事アイテムが、先生方の自腹の金額や頻度を少しでも減らす助けになれば嬉しいです。


 次回5月は、「先生というの仕事の魅力、良いところ」がテーマ。

《松下隼司》

松下隼司

大阪市公立小学校教諭。令和4年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。教科書編集委員。絵本「せんせいって」「ぼく、わたしのトリセツ」、教育書「教師のしくじり大全」「むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営」などを執筆。小劇場を中心に10年間、演劇活動を行う。Voicyパーソナリティー。

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