学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第222回のテーマは「学校ホームページにFAQ(よくある質問)を載せてほしい」。
保護者へわかりやすい説明を
学校の仕組みはわかりにくいとよく言われます。学校は少し前まで日常業務でFAXが使われていました。保護者などに対してわかりやすい説明ができていない学校もあるのが現状です。
民間企業は学校よりもわかりやすい説明をしている場合が多いです。たとえば、企業のホームページ(HP)にある「よくある質問(FAQ)」コーナーはその1つです。「FAQ」とは「frequently asked questions」で、直訳すると「頻繁に尋ねられる質問」となります。客から問い合わせの多い質問が項立てになっています。客が疑問に思うことの多くは、その「よくある質問(FAQ)」コーナーを見ると解決できるようになっています。そういった視点で学校のHPを見てみると、企業との違いに驚きます。特に公立学校ではほとんどの学校で「よくある質問(FAQ)」コーナーはありませんでした。メールなどでの問い合わせコーナーの無い学校もありました。一部の私立学校では、「よくある質問(FAQ)」コーナーが設定されていました。私立学校は募集なども関係しているのでしょう。
質問→相談→クレームへ発展
私はこの連載を担当していることもあり、学校へのクレームについて構造化をすることを研究テーマの1つとしています。そういったものの1つが「クレームのピラミッドモデル」です。産業事故に関する「ハインリッヒの法則」をもとに考えたものです。学校に対するクレームが発生する際、その前段階があり、その段階で解決できなかったことにより、クレームが発生するという考え方です。前段階とは、まず「質問」で、次が「相談」です。その上の段階が「クレーム」です。保護者は急に学校へクレームなどを言うのではありません。クレームを言う前には、疑問を抱いたり、何らかの相談をしたりということが多いです。その段階で解決できないことで、クレームへとつながっていきます。
保護者などが、何かの疑問を抱いたとしても、色々な事情で学校へ問い合わせをしないことがあります。電話をするのが億劫であったり、教員は忙しいと言われているので遠慮したりすることです。このように質問をしないままでは問題は解決しないことが多いです。時間が経つことでなんとなくモヤモヤとしたものが増えていってしまいます。そういったものが爆発したものが「クレーム」です。
質問に答えることで多くの問題が解決する
「よくある質問(FAQ)」コーナーは、その「質問」の段階での多くの問題を解決することにつながります。HPで少し調べるだけなので、それほど億劫でもありません。このようにすることで、保護者の疑問を減らし、結果として学校へのクレームを減らすことにもつながります。もちろん、電話などでの問い合わせが減ることになるので、電話対応の時間を削減することにもつながります。
「よくある質問(FAQ)」コーナーを作る際は、一気に立派なものを作り上げるのではなく、少しずつ作り上げる感じで良いのだと思います。何かの問合せがあったら、それを項目に加えていくという方法です。1年間かけて、そのコーナーを作り上げていくような気持ちで取り組んでいくと良いのではと思います。
本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
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