文部科学省は2025年1月31日、「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設の在り方に関する調査」の最終報告書を公表した。現在事業に採択している30大学が施設を整備・活用する中で、自身の強み・特色の最大化を図り、持続的・自立的に発展していくための課題や今後の方向性について、検討した結果を取りまとめている。
文部科学省では、日本全体の研究力の発展をけん引する研究大学群の形成に向け、地域中核・特色ある研究大学が、特定の強い分野の拠点を核に大学の活動を学内へ横展開するとともに、大学間で効果的な連携を図り研究大学群へと発展していくことが重要と位置付けている。実現に向けた取組みの1つとして、研究力の向上戦略のもと、大学間連携を図るための共同研究拠点化に向けた施設や産学官連携によるオープンイノベーション創出等の施設の整備・活用を支援・促進する「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設設備事業」を展開している。
同事業については、2023年4月21日付けで、千葉大学や神戸大学など国立大学22校、横浜市立大学・大阪公立大学の公立大学2校、慶應義塾大学、順天堂大学など私立大学6校の計30校が採択された。
今回、この事業をさらに効率的に進めるべく、大学間連携や産学官連携の推進のための施設の効果的なあり方について分析・考察することにより、それらを整備・活用する中で大学が自身の強み・特色の最大化を図り、持続的・自立的に発展していくための課題や今後の方向性について検討することを目的に、調査を実施。指針となる方針として最終報告書を公表した。
報告書では、大学間連携や産学官連携の推進のための施設の効果的なあり方を検討する際のポイントとして、中長期（10か年計画を目安とする）を見据えた大学経営のビジョンが適切に設計されており、実現するための実行計画が明確であるといった「研究戦略」と、施設建設の目的が明確かつ戦略と紐付いて整理されている、 施設活用計画が明確であるといった「施設の整備・活用」の2つの観点を重視すべきポイントとしてあげた。
さらにそこから、「研究戦略」「施設の整備・活用」ともに、あるべき姿や、実現するために重要となる観点、大学の強み・特色の最大化を測り持続的・自律的に発展していくための課題、今後の方向性について具体的なポイントを提示。外部人材の活用も含めた体制強化や、既存・他施設との違いを考慮した戦略立て、金額の妥当性も検討した収益計画、根拠のある明確な目標数値設定と具体的な施策への落とし込みなど、各大学が事業を進めるにあたり、チェックポイントとして活用できるよう示している。
報告書の最後には、参考となる海外大学の好事例を掲載。アメリカのユタ大学とサウスフロリダ大学、イギリスのダンディー大学の3校の事例を紹介している。たとえば、サウスフロリダ大学では、大学主導で強みとするバイオ／ライフサイエンス分野を軸として明確にし、地域経済発展に向けたイノベーション創出と経済開発を目的とした施設“リサーチパーク"を設立。地域社会との共同成長を目指した好事例として詳しく紹介している。
最終報告書は文部科学省Webサイトから全文を見ることができる。
◆参考情報：産学官連携・共同研究の施設整備事業採択大学一覧
＜提案大学（連携大学）＞
【国立大学22校】
・弘前大学
・山形大学
・千葉大学
・東京農工大学（電気通信大学）
・東京芸術大学（香川大学）
・新潟大学
・長岡技術科学大学
・金沢大学
・山梨大学
・信州大学
・浜松医科大学
・豊橋技術科学大学（静岡大学）
・滋賀大学（滋賀医科大学、京都女子大学、京都橘大学）
・神戸大学
・島根大学
・岡山大学
・広島大学
・愛媛大学（高知大学）
・九州工業大学
・長崎大学（宮崎大学、鹿児島大学）
・熊本大学
・総合研究大学院大学（高エネルギー加速器研究機構）
【公立大学2校】
・横浜市立大学
・大阪公立大学
【私立大学6校】
・自治医科大学
・慶應義塾大学
・順天堂大学（山梨大学）
・藤田医科大学（浜松医科大学）
・立命館大学
・沖縄科学技術大学院大学
