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【相談対応Q&A】進級・進学に不安を感じている

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第171回のテーマは「進級・進学に不安を感じている」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第171回のテーマは「進級・進学に不安を感じている」。

年度の切替わりに適切なケアを

 春は「別れ」と「出会い」の季節です。そういったことがプラス(良い思い出や育ちのチャンス)となる人もいます。逆にマイナス(嫌で辛い思い出やつまずきのきっかけ)となる人もいます。年度末のタイミングで子供が不安を抱いているという相談を受けた場合、学校(教員)はできる限りの対応をしていきたいです。この問題は年度末だけでなく、年度をまたいで新年度にもつながっていくものです。

 「段差を乗り越えることで大きく成長する」「段差は成長のチャンス」などの考えを聞くことがあります。ことわざにも「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」や「かわいい子供には旅をさせよ」などがあります。ただ、今の時代はそういった試練を経て成長を促すというやり方では無理があるように感じます。そういった試練で潰れてしまう子供が一定数出てしまうでしょう。

 年度末および新年度に関して、教員は「その後のフォロー」があまりできていないのではと私は感じています。私自身もそういった感じだったことを覚えています。新しい環境に馴染みにくい子供はそれなりにいます。そういった際、新しいクラスの担任とは信頼関係ができていないこともあり、うまく相談ができないこともあります。その点、前年度の担任はその子供の状況をよく把握しているので適切なケアをしやすいです。ただ、そういった場合でも、前年度の担任はあまり積極的に関わっていかないことが多いように思います。その担任も新しいクラスを担任しているという事情があります。それと共に、新しいクラスの担任が新たな人間関係を築こうとしていることの邪魔をしてしまうのではという配慮もあるように思います。

チームで教育活動を行っていく

 こういったことについては学校として考え方を変えていくことが良いのではと思います。クラスの子供を1人の担任だけで見るのではなく、チームとして教員集団で見ていくということです。そのチームには前年度の担任ももちろん含まれています。その子供のことをよくわかっている元担任が積極的に関わっていくことで解決できることもあるのではと思います。

 「学級王国」という言葉があります。担任が自分のクラスだけ良ければ良いという感じで個人プレーをしていくイメージです。そこまでいかなくとも、特に小学校には自分のクラスのことを優先で考えていく文化があるように思います。その点、中高は教科担任制であることもあり、チームで子供の学びを支えるということができていることが多いです。学校を取り巻く状況も以前よりも複雑になってきています。そういったこともあり、子供をチームで見ていく、特に不安を抱えている子供にはチームで適切に関わっていくということが大切なのだと思います。

 このチームは、教員だけではありません。「スクールカウンセラー」や「スクールソーシャルワーカー」と連携をしていくことも必要でしょう。他にもICT支援員や学校司書、部活動指導員などもいます。学校としては、そういった人達をしっかりと巻き込みながら、日々の教育活動を行っていくことが望まれます。進級や進学に関して不安を感じている子供がスムーズに新しい生活に馴染んでいくことを願います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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