学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第157回のテーマは「教師に反抗して以来、冷たい態度をとられる」。
人間関係が学校生活を左右する
学校における子供の学び・育ちの質は、さまざまな要素が関連しています。そういったものの中でも大きなものが「人間関係」です。友達との関係が悪い状態の時、場合によってはそれが「いじめ」となります。そういった人間関係がある程度落ち着いたものでないと、学びを中心とした学校での活動の質が大きく低下してしまいます。アメリカの心理学者のマズローは「欲求段階説」というものを唱えています。欲求は階層を成しており、下の階層のものを満たすことで、上位の欲求を獲得することができるというものです。人間関係は、5つの階層の中で下から2番目の「安全の欲求」および「所属・愛の欲求」あたりが関連してきます。良好な人間関係の構築無しに、より高度な欲求(承認の欲求、自己実現の欲求)を満たしていくことは難しくなります。
学校における子供の人間関係において、上で述べた「友達」との関係は重要です。それと同じように重要になってくるものが「教師」との関係です。「友達」の関係が良好でない場合でも、「教師」との関係が良好であれば、さまざまな形でフォローをしてもらえる可能性が高くなります。逆に「教師」との関係が良好でない場合、学校生活のさまざまな部分で不具合が生じてくる可能性があります。
これは、子供や保護者の立場から見て、教師に対して変に気をつかう方が良いということを意味している訳ではありません。何か困ったことがあれば、きちんと相談ができるような関係性を構築しておきたいというものです。しかし、時折、今回のテーマのような「先生が冷たい態度をとる」という話を聞くことがあります。
子供や親に不信感を持たれると伝えたいことが伝わらない
次は教師の立場から考えます。子供や親から「先生が冷たい態度をとる」と受け取られてしまう状況は教師としてはある意味でうまくいっていない状況でしょう。日々のさまざまな学校教育活動は、良好な人間関係ができているうえで成り立ちます。「あの先生はずるい」「あの先生は私の言うことを聞いてくれない」「〇〇さんばかりひいきしている」などの思いを子供や親が抱いてしまっている場合、教師が何かを伝えようとしても、子供や親にきちんと伝わらないことが多いです。
特に子供が教師に何かの意見を伝えたことがきっかけとしてそういった状況になることは避けたいです。タイトルにあるように「教師に反抗して以来、態度が冷たい」と受け取られてしまったら、いくつものマイナス面があります。その子供はそれ以降、自分の意見を教師を含めた大人に言うことに対してネガティブな思いを抱くはずです。組織の中において、当たり障りのない意見だけを言うような人になってしまいます。その他にも先ほども書いたように教師が伝えたいと思っていることが伝わりにくくなってしまいます。
教師は、子供との関わりにおいて、さまざまな配慮が必要です。子供の態度が不適切な場合には注意をすることも大切ですが、そういったことにおいて行き過ぎがないようにすることが大切です。子供や親をお店の「お客さん」のように捉える必要はないと思いますが、相手がどのように捉えるのかということに敏感になる必要はあると思います。教師と子供(親)の関係が適切な距離で、互いにとって良いものである状態であるよう心がけていきたいものです。
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