学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第133回のテーマは「学校のセキュリティをもっと高めてほしい」。
学校への不審者侵入
2023年5月25日に長野市の小学校で朝の時間に不審者に児童が襲われるという事件がありました。学校の発表によると始業前の8時16分に不審者が学校に侵入し、校庭で遊んだ後に教室に戻る途中の児童を追いかけ、ペットボトルから液体をかけたというものです。児童に怪我は無かったそうです。
学校への不審者侵入に関しては、2001年6月に大阪教育大学附属池田小学校で起こった事件によって学校での取組みが大きく変わりました。学校の門の施錠を行なったり、モニター付きのインターフォンで対応したり、防犯カメラを設置したりという対策を行う学校が増えました。しかし、校門での対応をしっかりとすることは、違う面での問題を発生させることになります。
セキュリティを高めることでデメリットも
1つ目は仕事の増加です。インターフォンを設置することで、そこへの対応する人が必要になります。インターフォンは職員室や事務室に繋がるのですが、来客の度に解錠の対応をする必要があります。さまざまな形で学校の忙しさについて話題となっています。そういった点でも考える必要があります。
2つ目は地域住民などとの関係に距離ができる可能性があることです。学校に門がなかったり、あったとしても開いている状態であれば、地域住民は学校へアクセスしやすいです。ボランティアなどさまざまな形で学校と関わることがしやすくなります。
私立学校や国立大学の附属学校などでは、校門に専属の警備担当の人を配置していることが多いです。本来は公立学校であっても、そういった形を取ることが望ましいです。しかし、そのためには予算措置が必要になります。残念ながら日本では、子育てに関してあまり予算をかけずにやってきたという歴史があります。公立学校の教員の残業代などに関する問題もそういったことと大きく関係があります。
学校だけで行えることは限りがある
以前、この連載でも書いたように通学時の安全確保に関しては、基本的には保護者などに責任があります。もちろん、校門から学校敷地に入ったら、学校の責任下となります。それぞれの学校の校門などの形状にもよりますが、現状では登下校時には門を開け、職員が交代で対応し、登下校時以外は門などを閉めておくというやり方になるのでしょう。現在でも、門のない学校もあります。そういった学校では、防犯カメラの設置なども1つの方法でしょう。
また、教職員の勤務時間との関係も難しいものです。実態として、教職員の勤務開始の時刻よりも児童・生徒の登校の時間の方が早いという場合もあります。一部の教職員が早く出勤することで現状を維持できているのが現在の学校です。
先ほども書いた警備担当の人を雇うということは学校単独では実施しにくいものです。自治体単位で予算を確保することなどが必要となります。保護者に対して、学校独自で行えることには限界があることを伝えていくと良いでしょう。直接、自治体へ訴えてもらうようお願いをするということも有効でしょう。実際に教室のエアコン設置に関しては、住民からの訴えによって、設置が進んでいった自治体もありました。住民の代表である市区町村議会の議員に現状を見てもらうことも良いかもしれません。今後、子供が巻き込まれる悲惨な事故が減っていくことを願います。
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