文部科学省は2023年2月3日、「通信ネットワーク環境の評価(アセスメント)の実施について(依頼)」を発表。2022年9月に実施した「校内通信ネットワーク環境整備等に関する調査」の結果をもとに、全国の学校における校内ネットワークの整備状況について報告するとともに、ネットワーク環境の評価(アセスメント)を未実施の自治体、学校設置者には「少なくとも一度アセスメントを実施していただくことを強く推奨」するとした。
この記事では、全国の自治体におけるアセスメントの実施状況や重要性等を紹介する。
2022年9月1日時点でのアセスメント実施状況
文部科学省は2021年3月にも、全国の自治体に対し、アセスメントの実施を推奨することを通知。最新の調査では、2022年9月1日時点でのアセスメント実施状況を尋ねた。
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アセスメントを実施した自治体等の数は全体の44.2%、「実施予定あり」を含めると全体の53.4%で、「未実施」の自治体は全体の46.6%となる845自治体。2021年5月末時点で実施済および実施予定の自治体は45.9%だったが、それ以降、アセスメントの実施状況が大きく改善したとは言えない。
現在は不具合がなくともアセスメントを実施するべき理由
アセスメント未実施の自治体からは、「対応の必要性がないと判断したため」「予算が確保できないため」等の理由があがったが、なぜ文科省はアセスメントの実施を「強く推奨」しているのか。
おもな理由は、校内ネットワーク環境構築の複雑さ、専門性の高さだ。校内ネットワーク環境は、各学校から直接インターネットに接続する「直接接続方式」もあれば、自治体等がセンターとして複数の学校の回線を集約してからインターネットに接続する「集約接続形式」もある。また、使用しているデジタル教材や学校規模等、学校や自治体ごとにその利用形態や環境は大きく異なる。
さらに、アセスメントの結果判明する課題についても、インターネット回線自体に問題がある場合や契約条件の確認不足、利用しているサービス側の不具合など、多岐にわたる。どこに不具合があるのかを確認し、改善につなげるためには専門的な知識が必要であり、これが事業者等によるアセスメントが推奨される大きな理由である。
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また、今後さらなるICT利活用が進み、MEXCBT(メクビット)による全国学力・学習状況調査をはじめ、多くの児童生徒が一斉にインターネットに接続する場面が増えることや、教材・サービス等にリッチコンテンツが増えていくことが予想される。現在は不具合がなくとも、今後新たな課題に直面する学校、自治体等が出てくることだろう。
文部科学省は、すでにアセスメントを実施した自治体においては、施工時のネットワーク設計等が不適切だったと判明するケースも見られているとし、特に未実施の自治体でのアセスメント実施を強く推奨している。また、日々のネットワーク運用においても、定期的に通信状況やトラブルの有無を把握し、必要に応じて有識者、事業者にアセスメントを依頼する等、継続的な対応も重要としている。
補助金の活用
「予算がない」という自治体については、補助金を活用するよう案内されている。アセスメントの実施に必要なさまざまな経費が、「GIGAスクール運営支援センター整備事業」の補助対象となっているほか、学校設置者が、ネットワークの専門家を含む「ICT活用教育アドバイザー」に相談する際の旅費・謝金については国が全額国費で負担することとなっている。
スピードテストサービスで定期的な計測を
リシードでは、「学校インターネット回線速度計測」サービスを提供している。利用料は無料で、全国の学校で利用できる。定期的に回線速度をチェックし、校内ネットワークの環境改善に役立ててほしい。
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