学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第126回のテーマは「先生に勢いがあり過ぎる」。
新年度が始まりました。1年でもっとも学校が慌ただしくなる時期です。子供も、教員も新しい学校や学級に希望を抱き、頑張ろうという意欲が満ちている時期でもあります。「始めよければ終わりよし」ということわざにもあるように、スムーズに新年度が始められると良いでしょう。
先生の気迫に圧倒されてしまう子も
学校では「黄金の3日間」という考え方があります。スタートからの数日はとても大事であり、その時期に学級のルールなどの理解をしっかりと進めていくというものです。教師が事前にしっかりと準備をし、計画的に学級や学習の仕組みなどについての子供達に伝えていきます。「黄金の3日間」の具体的なやり方や良い点などは多くの実践がありますので、そちらを参考にしてもらえればと思います。
そういった良さがあるのは承知したうえで、違うやり方もアリなのではということ今回のテーマにしたいと思います。多くの子供にとってプラスであろう「黄金の3日間」のようなものがマイナスに働いてしまう場合があります。デリケートな子供は先生の勢い(気合いのようなもの)がシンドイと感じてしまう場合もあります。「黄金の3日間」を教師が意識する時、その日、その時間にしたいこと(しなければならないこと)を達成しようとして、教師は焦り気味になることが多いです。
文科省は普通学級の子供のうち8.8%に発達障害の可能性があるという発表をしています。それまでは6.5%とされていたものです。そういった気質の子供が増えているのが現状です。そういった子供は「きちんと枠を示される」やり方が適することもありますし、逆に示された枠に違和感、抵抗感をもってしまう場合も考えられます。また、教師の勢いをプラスとして動くことができる子供もいますが、逆の子供もいます。
デリケートな子供は自分から声を出しにくいです。新年度のはじめのタイミングで違和感を表に出すことができぬまま4月を過ごすことが多いです。それが顕在化してくるのが、「連休明け」です。見える形としては「登校しぶり」で、「お腹が痛い」「頭が痛い」「体がだるい」などの身体的な症状が出ることもあります。5月の連休明けの時期は、子供が学校への不適応を起こしやすい時期の1つです。「5月病」と言われるものもこういったものと似たようなものです。不適応を起こしやすい時期は、5月の連休明けの他にも「夏休み明け」などがそうです。
ゆっくりとクラスの仕組みを作り上げる「スロースタート」
こういった現状を踏まえ、私は「スロースタート」でも良いのではと思っています。「黄金の3日間」の逆の考え方で、スタートから色々な面をガチガチに決めていくのではなく、半月から1か月かけてゆっくりとクラスの仕組みを作り上げていくというものです。ある程度の経験がある教員であれば、焦ってスタートからピシッとやらなくとも、後からでも十分に修正は可能です。無理に枠にはめるようとして、そこで不適応を起こす子供を出してしまうのではなく、子供の状況を見ながら少しずつ進めていくのはどうかというものです。
私は小学校の教員をしているころ、「新年度」「5月の連休明け」「夏休み明け」「冬休み明け」は、いつもゆったりと始めるようにしていました。先ほども書いたように色々な課題を抱えた子供を担当していたということもあります。一般的には良いものとされている「黄金の3日間」ですが、そこにこだわり、焦る教師の思いが逆効果を生むようなこともあります。目の前の子供を見て、何がその時の最善なのかを常に考えていく教師でありたいものです。
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