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【クレーム対応Q&A】問題行動のある児童生徒を出席停止にして

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第122回のテーマは「問題行動のある児童生徒を出席停止にしてほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第122回のテーマは「問題行動のある児童生徒を出席停止にしてほしい」。

出席停止は学校教育法で規定

 学校におけるトラブルは何らかの問題行動を起こす子供が原因となっていることが多いです。授業中に騒ぐ、気に入らない子供をいじめる、暴力をふるう、ものを盗むなどです。そういった問題行動を起こす子供に対しては「出席停止」という仕組みが法的に定められています。

 問題行動などを原因とする出席停止については、学校教育法第35条などで規定されています。具体的には次のような場合と示されています。

「他の児童(生徒)に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為」

「職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為」

「施設又は設備を損壊する行為」

「授業その他の教育活動の実施を妨げる行為」

 問題行動を起こす子供の出席停止は、他の子供の学びを成立させるためという意味が大きいです。もちろん、出席停止になる子供の学びについて考えていくことも大切です。

 また、出席停止については、学校保健安全法第19条でも規定されています。学校保健安全法での出席停止は「感染症の伝染防止」を想定しています。2020年春から日本中で対応している新型コロナウイルスへの対応もこういったものがベースとなっているものです。

 問題行動などが原因の出席停止に関して、文科省のデータによると2020年度に全国での出席停止の件数は4件となっています。そのうち、いじめに関するものは1件です。いじめの現状を踏まえると、出席停止に当たるような行動を取っている子供が1人というのは現状とかけ離れています。法律がきちんと運用されていないということを意味しているでしょう。問題行動が原因とする出席停止の人数の推移について見ていくと、校内暴力が1980年代は100件程度の出席停止がありました。その後は減少し、この10年は、年間で20件以下となっています。

犯罪に相当するいじめは、警察と連携して対応

 今後、問題行動に対する対応が変わってくる可能性があります。2023年2月、文科省が犯罪に相当するいじめが起きた場合、学校や教育委員会だけで対処するのではなく、速やかに警察に相談・通報をして対応することなどを求める通知を全国の教育委員会などに出しました。これまで、学校では子供が何らかの問題行動を起こした場合でも、警察などには伝えず、学校内で対応しようとすることが多かったです。警察沙汰になるとその子供の履歴に傷が付くことにもなり、できるだけそういったことをせずに済ませることができればという学校(教師)の親心のようなものからです。そういった学校(教師)の配慮が子供の育ちに良くない影響を与えている可能性があることも事実です。学校における問題行動は一般的な世の中のルールにおいては犯罪とされるものも多いです。いじめに関する行為、たとえば「暴力」「もの隠し」などは、それぞれ「暴行(怪我のない場合)・傷害(怪我のある場合)」「窃盗」にあたります。何らかのトラブルが起こったとしても、学校内で曖昧な対応で済ませてしまうことは、子供に善悪の判断をきちんと付けさせないことにつながる可能性があります。また、その時点では問題を収めたとしても、将来的に大きな事件を起こしてしまうことなどもあり得ます。文科省からの通達もあり、今後は出席停止も含めて、子供の問題行動への対応が変わってくる可能性があるでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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