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【相談対応Q&A】いじめアンケートを実施して

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第116回のテーマは「いじめアンケートを実施してほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第116回のテーマは「いじめアンケートを実施してほしい」。

学校と家庭との認識の差

 「いじめに関するアンケートを実施してほしい」という相談が学校に寄せられた時、学校は相当真剣に、そして深刻に捉えるべきだと私は考えています。そういった相談の背景には、すでにいじめが存在し、苦しんでいる子供、親がいることを意味しています。

 学校がいじめ等の問題を取り組む際に考える必要があるのは、「学校」と「子供・親」との「認識(意識)の差」です。わかりやすい例が不登校に関する文科省から出ているデータです。文科省が学校(教員)向けに実施した調査では不登校に関して最も多い理由は「家庭の事情」で12.3%。「いじめ」は0.2%、「教師等」は1.2%となっています。この調査は、不登校の子供本人に尋ねるのではなく、学校(教員)に尋ねるやり方です。

 しかし、調査の対象を「不登校の本人」とした場合、状況がまったく違ってきます。不登校の子供本人が答えた不登校の理由として一番多かったものは「教師等」で29.7%となっています。「いじめ」は25.2%です。学校の回答で一番多かった「家庭の事情」は6.0%となっています。調査の対象、時期、方法等がまったく同じではないので、その点は配慮する必要がありますが、数値に大きな違いがあることには注目するべきでしょう。

学校からは見えないものがある

 同じ不登校という現象に関しても「学校(教師)」と「子供・親」の立場の違いによってデータが大きく違っています。学校(教師)からは見えないもの(見えにくいもの・見たくないもの)があることを意味しています。特にいじめや不登校等は、学校(教師)にとってある種の都合の悪いものでもあります。学校(教師)は、そういったものを見えないこと、無かったことにしようとする心理が働くこともあります

早急にアンケート等を実施すべき

 それでは実際に学校が取り組むべきことについて考えていきます。はじめにも書いたように「いじめに関するアンケートを実施してほしい」という相談が学校に寄せられた時は、すでに「いじめがある」と考えるべきです。状況によっては深刻な場合もあると捉えるべきでしょう。早めにアンケート等を実施すべく対応していきます。

 あるタイミング(問い合わせがあった時、学期末・年度末等)で全員に実施する際は、アンケート(紙、オンライン)になります。また、日常的な連絡の仕組みを作るには学校Webサイトに問い合わせコーナーを作る等の形が考えられます。その際、記名でも、匿名でも知らせることができる仕組みにすることが望ましいです。いじめられている子供がすぐにでも助けてほしい場合は、自分の名前を書いたうえで知らせるでしょう。そういった状況ではなく、傍観者である子供がいじめの状況を知らせたい、けれども自分だと知られたくないという場合等は、名前を書かない方が敷居が低くなります。

 匿名にすることには問題点もあります。たとえば、いたずらのようなものが混ざる可能性があることです。学校に対する一般的な問い合わせ(相談・クレームも含む)の際は、記名にすべきだと私は考えています。記名でないと、自分勝手(独りよがり)な責任感の無い意見等が寄せられる可能性があるからです。学校Webサイトの問い合わせコーナーでは、記名や連絡先(メールアドレス、電話番号等)の記入をしないと送ることができないような仕組みが望ましいです。そういったことをしないままでは、自分の子供だけに関する苦情や爆破予告のようないたずらまで書き込みやすくなってしまいます。記名や連絡先欄を作ることで、すべてを防ぐことはできませんが、可能性を減らすことにつながります。

 今回のテーマである「いじめ等」に関することは、先に書いたような匿名のリスクを踏まえても、やはり匿名でも利用できる仕組みにすべきでしょう。状況によっては命に関わるような場合もあります。一般的な連絡の仕組みとは別に、いじめ等に関する連絡の仕組みを作ることが望まれます。悲しむ子供、苦しむ子供が少しでも減るようにことを心から願います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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