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修学支援新制度、大学の9割超「事務処理が負担」

 日本私立大学協会は、修学支援新制度を中心とした奨学金制度の実情と問題点を把握すべく「奨学金等に関する現況調査」を行い、2022年12月に速報版を公開した。新制度の「成績管理」「申請書類作成」「会計処理」は90%以上の大学が負担と回答している。

教育行政 その他
申請書類の作成
  • 申請書類の作成
  • 学生の成績管理
  • 修学支援新制度と既存の奨学金制度の区分
  • 直近の学納金改定
  • 学納金改定に影響を与えた要因
  • 学納金の改定予定の有無
  • 学納金の値上げを検討する要因
  • 修学支援新制度の開始による入学者数への影響

 日本私立大学協会は、修学支援新制度を中心とした奨学金制度の実情と問題点を把握すべく「奨学金等に関する現況調査」を行い、2022年12月に速報版を公開した。新制度の「成績管理」「申請書類作成」「会計処理」は90%以上の大学が負担と回答している。

 修学支援新制度は、従来の貸与型に加え、2020年度から消費税の増税分を財源とした「返済不要の給付型」が創設された。世帯収入に応じ3段階の基準を設け、高校生との4人家族の場合で年収460万までの世帯を支援するもの。住民税非課税世帯では、最大で年間約91万円の奨学金を受け取りながら、年間約70万円の授業料が減免される。

 奨学金等に関する現況調査は、修学支援新制度を中心とした奨学金制度の実情と問題点を把握して、私立大学と学生に有効な制度とするための課題を提起するために実施。2022年9月30日~11月4日の期間に回答のあった410大学のデータを集計し、速報版として公開した。なお、正式な報告書は2023年3月の発行を予定している。

 まず学納金改定については、直近では2020年が80校、2021年が60校と計140校が改定。学納金改定に影響を与えた要因は、「施設・設備の拡充(18%)」がもっとも多く、「消費税の引き上げ(15.4%)」が続いた。文系・理系共に半数以上の大学が授業料の値上げに踏み切っている。今後も物価の上昇や施設・設備の拡充に加え、大学同士の横並びを意識した授業料の値上げが検討されている。

 修学支援新制度の開始が入学者数に影響したかについては、「ほぼ変わらない」とした大学が322校(81.7%)と最多。多くの大学では学生獲得のプラス要素としてとらえられていないことがわかった。一方、入学者数が増加したと答えた大学は43校(10.9%)。学生確保の恩恵を受けたととらえている大学も一定数認められた。

 学生支援制度については、家計が逼迫する学生が増加していることから、78.4%の大学が「分納・延納」等で独自に支援を行っている。1校あたりの費用総額は、4,512万円~2億9,608万円。1人あたりの費用総額は25.8~36.2万円にのぼる。

 修学支援新制度と既存の奨学金制度の区分については、「とても負担」「やや負担」をあわせると、94.2%とほぼすべての大学が区分に負担を感じていることがわかった。また、「成績管理」「申請書類作成」「会計処理」は、90%以上の大学が負担と回答。学生の制度への理解が乏しいことや、給付と貸与の申請手続きが別々に進むことへの負担。特に新制度は家計審査や成績基準が煩雑なこと等により、学生も大学も混乱しているようすがうかがえる結果となった。新制度については、「大学ごとに設定している進級基準等、別の基準にするべきだ」との意見も多く聞かれた。

 政府は、新制度に中間所得層の多子世帯や、理工系・農学系の学部学生らを制度の対象に加え、2024年度の導入を目指している。日本私立大学協会は、今回の調査結果から、新制度を円滑に遂行するためには、一括で扱えるシステムの構築が求められるとしている。


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