GIGAスクール構想により、全国の小中学校における1人1台端末の整備がほぼ完了し、本格的なICT利活用が始まった。その一方で、高等学校における端末整備はいまだ道半ばで、文部科学省は、2024年度(令和6年度)までに高校全学年の1人1台環境整備の完了を目指している。
高校では2022年度より新たに「情報I」が必履修化され、プログラミングを含めた情報教育が進められている。さらに、情報端末を活用した学びを経験した中学生が高校に進学することを考えると、よりハイスペックな端末や周辺機器の整備が求められる。しかし、高校の端末整備には、予算や端末管理等の課題もあり、負担に感じている担当者も多く見受けられる。
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保護者負担想定の端末(緑)の都道府県別端末整備状況(画像出典:文部科学省)
また、小中学校についても、GIGAスクール構想5年目となる2025年を目途に1人1台端末の入れ替えを迎えると考えられており、さらなるICT利活用を目指した端末選定がまもなく始まるだろう。
今回、ソフトバンクのグループ企業として、国内最大級のICT流通事業を担い、全国の学校向けにもさまざまなハードウェア・ソフトウェアを提供するSB C&Sの重松孝俊氏に、1人1台端末整備における課題や解決策を聞いた。
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エンドポイントデバイスマーケティング1部 部長・重松孝俊氏
高校の1人1台端末整備が抱えるさまざまな課題
公費負担で学習者用端末を調達する場合に、最初のハードルとなるのがスペックだ。公立高校では、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を含め、公費を活用して端末を調達する例も多いが、予算ありきでの調達となるためにスペックが不十分で、授業での活用の幅を狭めてしまうといったことが考えられる。
では、各家庭で購入した端末を学習者用端末として学校に持ち込む「BYOD(Bring Your Own Device)」方式での整備はどうか。重松氏は「BYODの課題は、生徒ごとに端末のOSやスペックがばらばらになってしまうことです。生徒間に格差が生まれるだけでなく、授業で使用するソフトウェアや取り扱う内容に制限が生まれ、操作や表示も異なる。その結果、活用の幅を狭めてしまう恐れがあります」と指摘する。また、MDM(Mobile Device Management=モバイルデバイス管理)を端末に導入するハードルが上がり、端末の管理や利用ルールの整備が難しくなるという問題もある。
こうした課題を解決する方法として、「BYAD(Bring Your Assigned Device)」がある。BYADとは、学校が指定した端末を家庭が私費購入する方式だ。OSやスペックを統一することができ、トラブルや端末管理の手間を軽減することができる。
ただしBYAD方式を採用する場合でも、たとえば対面での販売会を実施するというのは学校にとって大きな負担だろう。また、保護者負担のもと学校が端末を調達する場合、集金業務が発生し、数百万円単位の代金を管理しなければならないことによるリスクや、未払い家庭への督促等、やはり学校の負担が大きいことが課題となる。独自の販売用Webサイトを用意し、指定した機種を販売することができれば、学校にとっても保護者にとっても手間が軽減されるが、ECサイトを自社で保有している販売店の数は限定的であることに加え、EC販売について独自のルールを課しているメーカーやベンダーもあり、端末の選択肢が狭まってしまう可能性も高い。
Yahoo!ショッピングを活用し、学校と保護者の負担を軽減
BYADでの端末整備の障害となるこれらの問題を解決するため、SB C&Sは、同社のグループ企業であるヤフーが提供するYahoo!ショッピングのECプラットフォームを活用したBYADソリューションを提供している。SB C&Sが、販売店向けに学校ごとの専用ECサイト販売の支援をおこない、販売店が直接保護者に端末を販売する仕組みだ。
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「Yahoo!ショッピングのプラットフォームを活用して構築した学校専用ECサイトには、学校が指定するOS・機種のみを掲載するため、保護者が誤って他の製品を購入してしまうという心配がありません。また、各学校専用のサイトに保護者がアクセスし、端末の購入を行うことが可能となるため、他校の保護者や生徒には公開することなく運用することができます」(重松氏)
学校側は専用サイトURLと購入期限を定めて保護者に案内するだけで良いため、販売会や説明会を開催する必要がなく、代金を学校で回収する手間やリスクも生まれない。また、希望があれば端末の設定を完了した状態(別途費用が発生)で配送することができ、学校への一括納品だけでなく各家庭への直送(オプションサービス)も選択可能だ。学校が関わる部分が最小限に抑えられているため、他の調達方式と比べても負担は大きく軽減されるだろう。
保護者視点でもメリットは大きい。先述のとおり、専用のECサイトには学校が指定した製品のみが掲載される他、購入必須の製品に加えてオプション品としてキーボードやヘッドセット等の周辺機器をあわせて選択できたり、誤購入を防ぐために購入数量を1台に制限できたりと、保護者が購入時に迷わないような細かいカスタマイズのノウハウもSB C&Sはもっている。
さらに特徴的なのが、各学校の販売サイトをYahoo!ショッピングのECプラットフォーム上に構築するため、普段のインターネットショッピングと同じ感覚で端末を購入することができるという点だ。保護者がすでに使用しているYahoo! IDが利用可能で、購入時のポイント付与や保有ポイントの利用が可能。クレジットカードやPayPay等、さまざまな決済方法にも対応している。保護者からの理解も得やすいだろう。
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幅広い選択肢から、「適切」な端末選びを
重松氏は、このBYADソリューションは学校や保護者の手間を軽減するだけでなく、さらなるICT利活用推進に役立つと話す。「端末のEC販売について、独自ルールで制限しているメーカーも少なくありません。SB C&Sでは、約4,000社とのメーカー取引で約40万アイテムを取り扱っており、各メーカー・ベンダーと交渉して販売ルールも整備していますから、多種多様な機種・周辺機器の調達に対応することが可能です。幅広い選択肢から、各学校にあわせた細かな端末選定ができるため、授業でのICT利活用をさらに推進することができるでしょう」(重松氏)
端末のOSについても同様だ。Windowsだけでなく、iOSやChrome OS等にも対応しており、学校ごとの要望に細かく対応可能だという。重松氏は「単に高い機種を選べば良いということではありません。学校ごとに必要な端末スペック、周辺機器を整備することが大切で、このBYADソリューションならそれを実現することができます」と、実際の利活用シーンを想定した端末選びの重要性を強調する。
「他にも、SB C&Sが提供するBYADソリューションでは、ICTディストリビューターの付加価値のひとつでもある適正な価格で端末を提供できたり、販売期間を自由に設定できたりとメリットが多くあります。ECサイトでの1人1台端末整備のハードルは高くない、ということを学校の担当者の方には知っていただきたいですし、課題解決に向けて、ぜひお気軽に相談していただきたいですね」(重松氏)
SB C&Sが提供するBYADソリューションの詳細はこちらGIGAスクール構想のおもな目的は、1人1台端末を「文房具」としてフル活用し、個別最適化された学びや、協働的な学びを実現することだ。その大前提であるICT環境の整備自体が学校にとっての大きな負担になってはならないだろう。SB C&Sの提供するBYADソリューションは、学校と保護者の手間を軽減し、子供たちと向きあうことに集中する大きな助けとなるものだと感じた。自校が必要とするICT環境とは、いったいどういうものなのかを改めて見つめなおし、ECサイトを通じた端末調達を検討してみてはいかがだろうか。
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