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動画視聴やデジタル教科書で必要な回線速度の算出方法まとめ

 GIGAスクール構想による小・中学校への1人1台端末の環境は整ったものの、学校のインターネットの通信速度に不満があるケースも多いだろう。では、端末1台、1クラス、1校ごとにどれだけの通信帯域が必要なのか。この記事では、各単位での必要帯域の算出方法を紹介する。

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動画視聴やデジタル教科書で必要な通信速度の算出方法まとめ
  • 動画視聴やデジタル教科書で必要な通信速度の算出方法まとめ

 GIGAスクール構想による小・中学校への1人1台端末の整備が完了し、ICT端末を「とにかく使ってみる」というフェーズから「いかに有効活用するか」という段階に入りつつある。しかし、端末の環境は整ったものの、肝心のインターネット環境は学校によって充実度に差があり、学校のインターネットの通信帯域(通信速度)に不満があるケースも多いだろう。では、実際に端末1台、1クラス、1校ごとにどれだけの通信帯域が必要なのか。この記事では、各単位での必要帯域の算出方法を紹介する。

ストリーミング通信(動画視聴、Web会議等)

 YouTube等の動画ストリーミングサービスでの動画視聴、Zoom等のWeb会議サービスでの遠隔授業を行う際の通信方式が「ストリーミング通信」だ。ストリーミング通信ではインターネットに接続してデータを読み込みながら映像や音声を再生する。その名のとおり、データが流れ続ける通信方式である。

端末1台に必要な通信速度

 ストリーミング通信を行っている間はデータが流れ続けるため、「端末1台に必要な通信帯域 = アプリケーションが必要とする通信帯域」である。たとえば、YouTubeでは動画のストリーミング再生に必要なおおよその通信帯域について、以下のように示している。

動画の解像度

推奨される持続的な速度

4K

20Mbps

HD 1080p

5Mbps

HD 720p

2.5Mbps

SD 480p

1.1Mbps

SD 360p

0.7Mbps

※bps(bit per seconds):1秒間に送受信可能なデータ量を表す単位。1Mbps=1,000kbps、1Gbps=1,000Mbpsである。

1クラスで必要な通信速度

 1クラスで必要な通信速度の目安は「端末1台に必要な通信帯域 × クラス内の児童生徒数 × 同時利用率」となる。

:1クラス(40人)が全員同時(同時利用率100%)にHD画質 720pの動画を再生する場合、1クラスで必要な通信帯域は以下のように求められる。

2.5Mbps × 40 × 100% = 100Mbps

学校全体で必要な通信速度

 学校全体で必要な通信帯域は、「1クラスに必要な通信帯域 × クラス数 × 同時利用率」である。ただし、「同時利用率」を算出する際には、視聴する動画の長さや画質、授業時間、学校でのICT活用度合い等、複数の変数が存在するため、目安として「1クラスに必要な通信帯域 × 同時利用クラス数」と考えても良いだろう。

:3クラス(120人)が全員同時(同時利用率100%)にHD画質 720pの動画を再生する場合、学校全体で必要な通信帯域は以下のように求められる。

2.5Mbps × 40 × 100% × 3 = 300Mbps

 なお、学校で必要な通信帯域の詳細な算出手順については、文部科学省発行の「学習系ネットワークにおける通信環境最適化ガイドブック」を参照してほしい。

ダウンロード通信(デジタル教科書、Webサイト等)

 デジタル教科書(Webブラウザ版)やWebサイトを閲覧する際の通信方式が「ダウンロード通信」だ。表示するたびにページをダウンロードし、端末に表示する。このとき、通信帯域に空きがある場合は上限まで通信帯域を消費する。

端末1台に必要な通信速度

 ダウンロード通信に必要な通信帯域の算出方法についてみていく。「端末1台に必要な通信帯域 = ダウンロード通信容量 × 8(Byteをbitに換算) ÷ ダウンロード時間」である。 

 ダウンロード通信で必要な通信帯域を算出する際に考慮しなければならないのは、1度の表示(Webサイトを表示する、デジタル教科書のページをめくる等)でどれだけの秒数を許容できるかだ。「デジタル教科書のページをめくるたびに何秒も要していては授業のテンポが悪くなるため、より短い時間で表示したい」となれば、それだけ必要とする通信帯域は増加する。

:見開きデータ容量が2MBのデジタル教科書を3秒間かけてめくる場合、端末1台に必要な通信帯域は以下のように求められる。

2MB × 8 ÷ 3 = 5.3Mbps (小数第2位以下切り捨て)

1クラスで必要な通信速度

 1クラスで必要な通信帯域は、ストリーミング通信同様、「端末1台に必要な通信帯域 × クラス内の児童生徒数 × 同時利用率」となる。

:1クラス(40人)が全員同時(同時利用率100%)に、見開きデータ容量が2MBのデジタル教科書を3秒間かけてめくる場合、1クラスに必要な通信帯域は以下のように求められる。

5.3Mbps × 40 × 100% = 213Mbps(小数第2位以下切り捨て)

学校全体で必要な通信速度 

 学校単位で必要な通信帯域は、「1クラスに必要な通信帯域 × クラス数 × 同時利用率」である。ストリーミング通信同様、簡単に「1クラスに必要な通信帯域 × 同時利用クラス数」と考えても良いだろう。

:3クラス(120人)が全員同時(同時利用率100%)に、見開きデータ容量が2MBのデジタル教科書を3秒間かけてめくる場合、学校全体で必要な通信帯域は以下のように求められる。

213Mbps × 3 = 640Mbps

 ただし、Webサイトやデジタル教科書の表示で通信する時間は、一般的には動画等のストリーミング通信より短い傾向があるため、複数クラスでの同時利用は少ない傾向がある。また、必要な通信帯域の詳細な算出手順については、文部科学省発行の「学習系ネットワークにおける通信環境最適化ガイドブック」を参照してほしい。

リシード「学校インターネット回線速度計測」

 リシードでは、「学校インターネット回線速度計測」サービスを提供している。利用料は無料で、全国の学校で利用できる。

リシード「学校インターネット回線速度計測」

 「学校インターネット回線速度計測」は、サーバ環境に左右されない通信速度測定システムとして定評があり、今年サービス開始20周年を迎えた「RBB SPEED TEST(アールビービー スピードテスト)」を、学校向けに改良して提供するもの。

 全国の国公立・私立「小学校」「中学校」「高等学校」「大学」「専門学校」に対応しており、学校名・接続状況・回線(不明な場合は選択不要)を選択して測定するというシンプルな操作で利用し、授業前の確認、教室や機器ごとの回線速度の違いの把握などに活用できる。

 「学校インターネット回線速度計測」を定期的に実施し、上掲の内容とあわせて学校の回線環境の把握・改善に役立てていただきたい。


《多賀秀明》

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