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【大学受験】共通テスト、継続困難…最大17億円の赤字発生

 大学入学共通テストについて、現状の財政構造のままでは継続的・安定的実施が困難であることが2021年4月9日、明らかになった。試算によると、検定料引上げ等の対応を行わない場合、2023年度には最大17億円の赤字が発生するという。

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運営審議会将来構想ワーキングチーム 議論のまとめ(概要)
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 大学入学共通テスト(以下、共通テスト)について、現状の財政構造のままでは継続的・安定的実施が困難であることが2021年4月9日、大学入試センターのワーキングチームによる議論のまとめで明らかになった。試算によると、検定料引上げ等の対応を行わない場合、2023年度には最大17億円の赤字が発生するという。

 大学入試センターは、2019年3月の「独立行政法人大学入試センター運営審議会」の提案に基づき、経営上の課題等について大学・高校の関係者とも議論し、施策として実行できるようにするため、2020年6月に運営審議会の下に「将来構想ワーキングチーム」を設置。センターの経営改善、大学入学者選抜におけるセンターや大学入学共通テストの役割等に関して審議し、提言をまとめた。

 提言では、喫緊の課題として今後、18歳人口の減少に伴い、共通テストの志願者減が続くと予想され、現状の財政構造のままでは、共通テストの継続的・安定的な実施が困難になることが明らかであると指摘。自己収入の約9割を検定料収入に依存している大学入試センターが、このまま検定料引上げ等の対応を行わない場合、2021年度(令和3年度)から始まる第5期中期目標期間において毎年十数億円の赤字が新たに発生し、2023年度(令和5年度)には最大17億円の赤字が発生するという試算もあると説明している。

 大学入試センターの収支改善のための直接的な対応としては、検定料の値上げも検討対象であるが、検定料は文部科学省令で定める事項であり、2005年度(平成17年度)に現行の検定料(2教科以下1万2,000円、3教科以上1万8,000円)とされて以来、据え置かれている。また、2011年度(平成23年度)以降、大学入試センターに国からの運営費交付金は措置されておらず、検定料に依存する状況が続いている。

 検定料については、「平成17年度以降現在までの物価や消費税の上昇、人件費等の基盤的経費の変動に照らして現行の検定料の設定が適切かどうかについて、再度検討することが必要」と提言。共通テスト成績送付に要する事務手続き費用として、入学志願者1人1回につき750円を大学から徴収している「成績提供手数料」についても、「新たな赤字を解消するには大幅な値上げが必要」としている。

 一方、大学入試センターの経費については、「これ以上の削減は試験実施そのものに影響を与えかねない」と指摘。大学入試センターが一定の基準により予算の範囲内で大学に配分している試験実施経費については、「実施方法・体制の維持・向上を大前提として、配分額の圧縮を図ることが適当。合理化や配分基準の見直しが求められる」と提言している。

 将来的な収入枠組みの在り方に関しては、「高大接続政策の中核となる共通テストの実施を担う大学入試センターは、国の教育政策の一端を担っている」として、継続的・安定的な運営に必要な費用を受験者や大学のみに転嫁するのではなく、「国からの安定的な公的支援を求めることが必要」と明言。中長期的な視点から、投資的資金の調達や余剰金の活用など新たな方策の検討も求められるとした。

 将来的な試験事業の在り方については、「主として一般選抜における利用を前提としている共通テストについては、その位置付けを再検討し、これまでの役割を軽減することも可能」と説明。例として、「必履修科目の内容を中心に出題するなどスリム化」「受験者が極端に少ない科目は各大学が資格・検定試験等を活用」などをあげ、10~20年程度で大幅に見直していくことが必要不可欠としている。
《奥山直美》

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