「整ったレポートばかりが提出され、甲乙つけがたくなってしまった。どこにAIを活用したのかがわからない」といった声を、高校や大学の先生方から聞くことが増えた。地域によって違いはあるが、私が出前授業で訪れる小中学校でも、生成AIを使ったことがあるという児童生徒に多く出会う。AIの出力を十分に吟味しないままコピー&ペーストして提出すれば、完成した原稿からだけでは、本人が何を理解し、どう考えたのかを見取ることは難しくなる。
ケンブリッジ大学出版局・評価機構は、各国での英語教育における生成AIの活用について、「AIの導入や評価に教師と学習者を参加させること」「教師が継続的に研修できるよう支援すること」など8つの原則を示した。

中でも私が注目したのは、4番目の「課題の完成品に加えて、制作の過程や本人の振り返り、独立して考える力を評価に取り入れる」という提言だ。
この提言は英語教育の現場を出発点としているが、完成した原稿だけで学習者の思考を見取れるのかという問いは、国語の作文にも通じる。特に、教師が途中経過を見取りにくい課題では、提出された文章だけで評価することが難しくなる。
それを踏まえ、たとえば作文の下書きができたら、児童生徒に「いちばん伝えたい一文」に線を引いてもらう。ペアでその理由を話し、聞き手は「どうしてそう思ったの?」と1つ質問する。書き手は答えを踏まえて一文を書き足し、そう書いた理由を欄外に残す。教師は完成稿とその書き足しを見比べ、子供がどこで考えを深めたかを見取る。
学校でAIの利用を認めている課題なら、AIからの提案を採用した点、採用しなかった点も短く添えてもらうことも考えられる。
この「対話」には、AIを使ったかのチェックや評価だけでなく、考えをさらに深める働きがあることも指摘したい。理由を話そうとして、自分の考えの曖昧なところに気づき、もう一度自分の体験を思い返したり、本を読んだり、文章を書き直したりすることもあるだろう。
お互いの文章を読み、問いを立てることは、文章の内容や表現を理由とともに考える経験になる。こうした経験を重ねることは、AIの出力も自分の知識や経験に照らして考える力の土台になる。
私が参加する次期学習指導要領に向けた国語の審議でも、児童生徒が成果物を自分の言葉で説明することが議論された。読む、書く、話す、聞くを行き来しながら考えを深める時間として、この短い対話を生かすことができると良いのではないだろうか。
【執筆者】竹内明日香氏
中央教育審議会国語ワーキンググループ委員/アルバ・エデュ代表理事
全国の小中学校などを対象に、自分の意見を持ち、まとめて、人前で伝える実践型の授業や児童・生徒が安心して発言できるクラスの「心理的安全性」を高める学級づくり、主体的・対話的な学びを促す指導法の研修などを実施。生成AIとの対話や音声解析を通じて、子供の思考整理やプレゼンの練習・フィードバックを支援するアプリの普及にも取り組む。東京大学法学部卒、日本興業銀行を経て現職。二男一女の母。TOPPANホールディングス等、複数の企業で社外取締役を務める。 著書に『すべての子供に「話す力」を』(英治出版)ほか








