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【明日使える指導術】子供の心に火をつける「褒め」の技術

 「明日使える指導術」は、小学校・中学校で約10年の教員経験をもつ現役中学校教諭 阪野一輝氏による寄稿。今回のテーマは、「子供の心に火をつける『褒め』の技術」。

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 教育に関わるすべての人の視点や問いを広く取りあげ、これからの学びをともに考えていく。リシードでは、寄稿連載というかたちで新たな企画を展開する。

 「明日使える指導術」は、小学校・中学校で約10年の教員経験をもつ現役中学校教諭による寄稿。教室で子供たちと向きあう中で試行錯誤を重ねてきた「褒める」「叱る」といった日々の関わりに焦点を当て、その実践知をもとに、子供たちが自ら考え動き出すためのヒントを提示する。

 今回のテーマは、「子供の心に火をつける『褒め』の技術」。


 こんにちは。阪野一輝です。小学校や中学校の教員として約10年働いてきました。

 私自身、教室で子供たちと向きあう中で、「褒めること」そして「叱ること」の難しさに何度も頭を悩ませてきました。今回は、私がこれまでの実践から学び、明日からすぐに試せる「子供の心に火をつける『褒め』の技術」についてお伝えします。

子供の心に火をつける「褒め」の技術…自己肯定感を育む4つのアプローチ

「褒めているのに、子供の行動が全然変わらない」
「クラスを盛り上げようと声をかけているのに、一部の子供にしか響いていない気がする」

 教室で子供たちと向きあう中で、そんなもどかしさを抱えたことはないでしょうか。かつての私も、まさにその1人でした。「とにかく褒めて伸ばそう」と、毎日のように「すごいね!」「さすがだね!」と声を張りあげていた時期があります。

 しかし、最初は子供たちも嬉しそうにしていたものの、徐々に反応が薄くなっていきました。そればかりか、教師の評価に依存し、「先生が考える正解」ばかりを気にして動く子供たちも出てきてしまったのです。

 今なら、当時の自分の何が空回りしていたのかがわかります。私は子供を「評価」していただけで、子供の心に届く「技術」をもっていなかったのです。

 褒めることは、決して教師の生まれもったセンスやキャラクターではありません。

 子供が「自分には価値がある」と実感し、自ら動き出すための、誰でも習得できる「体系立てられた技術」です。今回は、明日から教室ですぐに試せる「褒め」の4つのアプローチについてお伝えします。

プロセスへの「実況中継」…見たままを言葉にする

 私たちがついやってしまいがちなのが、「100点が取れてすごい」「足が速くて素晴らしい」といった、結果に対する褒め方です。

 しかし、結果だけを褒められた子供は、「良い結果を出さなければ認められない」と感じるようになります。また、結果が出にくい子供にとっては、最初から諦める原因にもなりかねません。

 そこで意識したいのが、結果ではなく、今目の前で起きている努力や工夫をそのまま伝える「プロセスへの実況中継」です。これは、教師の主観的な評価を交えず、見たままの事実を言語化する技術です。

 たとえば、次のような声をかけます。

「プリントが配られたとき、後ろの人に両手で渡していたね」
「友達が困っているとき、自分の作業を止めてすぐに駆け寄っていたね」
「昨日まではここで諦めていたのに、今日は消しゴムで消してもう一度解き直しているね」

 このように、ただ事実を実況中継しているだけにもかかわらず、子供は「先生は自分のことをちゃんと見てくれている」という深い安心感を抱きます。

 大げさな賞賛の言葉はいりません。ただ事実を認めてもらえるだけで、子供の自己肯定感は静かに、しかし確実に育まれていきます。

「Iメッセージ」と「愛メッセージ」…主語を「私」にする

 「よくできました」「素晴らしいです」という言葉は、どうしても教師が上に立ち、子供をジャッジする「You(あなた)メッセージ」になりがちです。これが行き過ぎると、子供は「教師の顔色を伺って行動する」ようになってしまいます。

 しかし、子供の心を内側から動かすのは、教師を主語にした「I(私)メッセージ」そしてそこに愛情を乗せた「愛メッセージ」です。子供の望ましい行動に対して、教師自身の素直な感情を伝えてみてください。

「〇〇くんが床のゴミをサッと拾ってくれて、先生、すごく嬉しかったな」
「みんなが静かに話を聞いてくれたから、大切なことがしっかり伝わって、先生とても助かったよ」

 「嬉しい」「助かった」という言葉は、評価ではなく「感謝」であり、愛の表明です。

 子供は、大好きな先生を喜ばせることができた、自分の存在が誰かの役に立ったと実感したとき、信じられないほどのエネルギーを発揮します。

 教師という1人の人間として、子供に愛のある素直な気持ちを届けること。それだけで、言葉の浸透度は劇的に変わります。

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 さらに、きちんと「愛メッセージ」を伝えていくことは、「あなたの成長をいつも観ているよ」という「eye(眼差し)メッセージ」にもつながっていきます。

本人・友達に「語らせる」…多角的な承認の場を作る

 褒める役割を、教師1人で抱え込む必要はありません。教師から子供への一方向の指導だけでは、どうしても効果に限界があります。

 そこで、教室の中に「お互いを認め合う空気」をデザインするために、子供たち自身に語らせる技術を取り入れます。

1) 本人に語らせる
 子供が良い作品を作ったり、素敵な行動をしたりしたとき、教師がすべてを解説して褒めるのではなく、本人にマイクを向けます。

「この絵、すごく素敵だね。特にどこが気に入っている?」
「さっきの班の話しあい、すごく上手だったね。どんな工夫をしたの?」

 このように問いかけることで、子供は自分のこだわりや努力を自らの言葉で振り返り、自己有能感を深めることができます。

2)友達に語らせる
 さらに、その価値をクラス全体へ広げるために、周囲の子供たちを巻き込みます。

「みんな、〇〇さんのこのノートのまとめ方、どう思う?」
「〇〇くんが朝、黒板を綺麗に拭いてくれていたんだけど、気付いていた人いる?」

 教師が1人で「素晴らしい」と言うよりも、仲間から「見やすくて真似したい!」「ありがとう」と言われるほうが、子供にとってはるかに誇らしいものです。周囲に良さを振ることで、教室全体がポジティブな承認の輪で満たされていきます。

4)戦略的な「場面創出」…偶然の褒めを待たない
「うちのクラスには、なかなか褒めるところが見当たらない子がいる」

 そんな風に悩む先生もいるかもしれません。

 しかし、それは「褒めるチャンス」を偶然に頼っているからです。優れた教師は、褒める場面を待つのではなく、意図的に仕掛け、創り出します。

 たとえば、いつも授業中に集中が切れがちな子がいたとします。その子が輝けるように、あえて事前に役割を任せてみるのです。

「今日の体育の片付け、力もちの〇〇くんにリーダーをお願いしてもいい?」

 あるいは、その日の朝の会で「今日頑張ってほしいポイント」を全体に伝えておくことも有効です。

「今日は、友達の話を最後までうなずきながら聞く、ということを意識してみよう」

といったように、あらかじめ目指す姿を提示しておくことで、子供たちは行動しやすくなり、教師側も「〇〇さんは相手の話にあわせてしっかりとうなずいて聞けているね」と、すぐにその場でフィードバック(価値付け)を返すことができます。

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 子供が成功せざるを得ない状況を、教師が先回りしてデザインする。これこそが、クラスの全員を1人残らず救いあげるための「戦略的な褒め」です。

おわりに

 褒めるということは、子供をご機嫌にさせるための「おだて」ではありません。子供の事実を注意深く観察し、適切なタイミングで、適切な言葉を選んで届ける「技術」そのものです。

 まずは明日、教室に入ったら、子供たちの行動をひとつ「実況中継」することから始めてみませんか。教師が感情のぶつかりあいを脱し、技術として褒め始めたとき、子供たちは自ら考え、動き出すようになります。

 しかし、教室の土壌を整えるためには、温かい光(褒め)だけでは足りません。時には、子供の行く末を守るための「凛とした規律」、つまり「叱る技術」が必要になります。

 次回は、現場の先生方が最も頭を悩ませる「優しさと甘さの境界線」について、人格を傷つけずに子供の行動を正す「正しい叱り方」の技術を紐解いていきます。

《阪野一輝》

阪野一輝

 現役の中学校教諭。小・中学校での約10年の教員生活の中で、学級経営や子供たちの学びを深める指導法を研究・実践。これまでの経験をもとに、日々「明日から使える教育技術や考え方」を発信している。子どもたちが自ら考え動き、将来先生がいなくても自分の未来に向かって学びを調整していける「主体性」を育むこと、そして教育に携わる人々が幸せに働いていける社会を目指す。

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