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授業スライド「小出し」で成績アップ、東理大が科学的に証明

 東京理科大学は2026年7月9日、同大の市川寛子教授らの研究グループが授業スライドの情報を説明にあわせて少しずつ見せる「累積提示法」が、学習者の視線を重要な個所へ導き、学習効果を高めることを明らかにしたと発表した。大学生を対象とした実験で、同手法が学習後テストの得点を向上させるプロセスを科学的に裏付けた。

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累積提示法と一斉提示法の違い
  • 累積提示法と一斉提示法の違い
  • 学習後テストの平均得点
  • 学習中の視線計測指標の平均値

 東京理科大学は2026年7月9日、同大の市川寛子教授らの研究グループが授業スライドの情報を説明にあわせて少しずつ見せる「累積提示法」が、学習者の視線を重要な個所へ導き、学習効果を高めることを明らかにしたと発表した。大学生を対象とした実験で、同手法が学習後テストの得点を向上させるプロセスを科学的に裏付けた。

 学校や大学の授業では、教員がスライドを示しながら説明する場面が広く見られる。しかし、完成版のスライドを最初から一度に提示すると、学習者は教員の説明を聞きながら「いま説明されている内容はスライドのどの部分か」を自ら探し出す必要がある。説明の内容と見るべき場所がうまく結び付かないと、重要な情報を見落としたり、理解に余分な時間がかかったりする可能性がある。

 教育工学の分野では、情報を小さなまとまりに分けて順番に示すことなどが、学習者の理解を助けると考えられてきた。しかし、従来の研究では、その有効性は学習前後のテスト成績で評価され、学習中に学習者がどこを見ていたか、説明とスライド上の情報をどう結び付けていたのかまでは把握できていなかった。

 同研究グループは、日本人大学生40名を、情報を段階的に追加していく「累積提示法」と、最初から完成版を見せる「一斉提示法」の2グループに分け、実験を行った。生物の個体群間の相互作用に関する約20分の授業動画を視聴させ、学習前後のテストで成績を比較した。教員の音声説明は両グループで共通とし、スライドの情報提示の方法のみを変えた。

 さらに、学習中の視線の動きを視線計測装置で記録した。その結果、累積提示法で学んだ学生は、一斉提示法で学んだ学生よりも、学習後テストの得点が有意に高くなった。また、視線計測からは、累積提示法では説明に関連する個所への注視時間が長く、説明後にその個所へ視線が向くまでの時間も短いことが示された。これらの結果は、累積提示法が学習者の視線を適切に誘導し、それが学習効果の向上につながった可能性を示唆している。

 一方、授業やテストの難しさ、授業のわかりやすさに関する主観的な評価には、提示方法による有意な差は見られなかった。このことは、学習者が必ずしも「楽になった」と感じていなくても、実際の学習成績や視線の動きには違いが現れる可能性を示している。

 同研究で示された知見は、特別な機器や新しい教材を必要とせず、スライドの見せ方を工夫するだけで学習者の注意を適切に導ける可能性を示している。学校や大学だけでなく、企業研修、資格取得のためのオンライン学習、遠隔授業など、スライドや動画教材を用いるさまざまな教育場面で活用できる。将来的には、AIを用いた教材生成システムにおいて、説明に合わせて情報を段階的に提示する教材を自動的に作成する技術への応用も期待される。

 同研究を主導した市川教授は、「学校教育や大学教育でスライドを活用している先生方には、既存のスライドでも情報を小出しにするだけで学習者が学びやすくなる点をお伝えし、今すぐ実践できる工夫としてお使いいただきたいです。また、すでに累積提示を実践されている先生方には、視線誘導の観点からその有効性が裏付けられたとお伝えできればと思います」とコメントしている。

 同研究成果は2026年6月25日に国際学術誌「Journal of Computer Assisted Learning」にオンライン掲載された。論文タイトルは「Cumulative Presentation Enhances Learning Outcomes by Directing Learners’ Visual Attention」。

《風巻塔子》

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