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【図工でつながる社会】セブン‐イレブンの色で、まちを見る

 「図工でつながる社会」は、図画工作を専門とする小学校教諭 八嶋孝幸氏による寄稿。今回のテーマは、「セブン‐イレブンの色で、まちを見る」。

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作品例1
  • 作品例1
  • 作品例2
  • セブン‐イレブンの店内に展示されたようす

 教育に関わるすべての人の視点や問いを広く取りあげ、これからの学びをともに考えていく。リシードでは、寄稿連載というかたちで新たな企画を展開する。

 「図工でつながる社会」は、図画工作を専門とする小学校教諭 八嶋孝幸氏による寄稿。教育者、研究者、アーティストという3つの視点から、造形教育の可能性を探究している。身近な社会に存在する形や色、デザインに込められた意味や価値に目を向け、子供たちが社会とつながりながら学ぶ造形教育の実践を紹介する。

 今回のテーマは、「セブン‐イレブンの色で、まちを見る」。


 青森県にある国立大学法人の附属小学校で勤めている八嶋孝幸です。教職20年目で、図画工作を専門としています。教育を通して、子供たちが地域や社会と豊かに関わりながら、自ら未来を切り拓く力を身に付けられることを目指しています。

色紙と切り絵から広がった、「身近な社会」との出会い

 私たちの身の回りには、多くの形や色があります。道路標識、看板、商品のパッケージ、店の外観、ロゴマークなど、普段は意識せずに通り過ぎているものの中にも、私たちの生活や記憶に深く入り込んでいる色があります。私の図画工作の授業では、子供たちがそうした「身近な社会の形や色」と豊かに関わることを大切にしています。

 その一例として取りあげたのが、多くの子供たちにとって日常的な存在であるコンビニエンスストア「セブン‐イレブン」の色です。セブン‐イレブンと聞いたとき、人が思い浮かべるのは、白地にオレンジ、緑、赤のラインではないでしょうか。店の看板や外観、商品棚、広告など、まちの中で何度も目にしてきた色の組みあわせです。

 この色を基に色紙をつくり、その色紙を使って切り絵作品の製作をしました。特定のキャラクターや商品、ロゴを表すのではなく、あくまでも「色」そのものを手がかりに表現する活動です。そこには、子供たちに「色がもつ力」に気付いてほしいという願いがありました。私たちは色の組みあわせを見るだけで何かを思い出したり、場所や雰囲気を感じ取ったりします。色は単なる飾りではなく、社会の中で意味をもって働いているのです。

「この色、見たことある」から始まる学び

 授業のはじめに、子供たちとセブン‐イレブンの色について話しあいました。「セブン‐イレブンって、どんな色だったかな」と問いかけると、子供たちはすぐに口々に答え始めました。「オレンジがある」「緑もある」「赤い線もある」「白いところも多い」「看板の上の方に線がある」。実際にロゴや店の外観を細かく見ていなくても、子供たちははっきりと色の印象を記憶していました。中には、色の順番や線の太さまで思い出そうとする子もいました。普段何気なく見ているものが、子供たちの中に残っていることがわかります。

 ひと通り話しあったあと、セブン‐イレブンの色の組みあわせが、「色彩のみからなる商標」に日本における登録第1号として認められた特別なものであることや、それぞれの色に込められた意味を紹介しました。子供たちはその話を聞き、色がもつ力への興味を高めていきました。その後、登録データを参考につくった色紙を配り、切り絵の製作に入りました。

 子供たちは、思い思いの形を切り出していきました。花のような形、動物のような形、建物のような形、抽象的な模様、幾何学的な構成。中には、何かを具体的に表すのではなく、切った形の面白さや色の重なりを楽しむ作品もありました。興味深かったのは、子供たちがセブン‐イレブンのロゴや店の絵を直接描いているわけではないのに、どの作品にもどこか「セブン‐イレブンらしさ」が感じられたことです。

作品例1
作品例2

 鑑賞の時間には、「これ、セブン‐イレブンの中に飾ってあっても変じゃない」「お店のポスターにもありそう」「この色だけで、なんかセブン‐イレブンって感じがする」「表し方は全然違うのに、同じお店のものみたい」という声が出てきました。子供たちは、自分たちの作品を見ながら、色の組みあわせがもつイメージの強さに気付いていきました。表したテーマは自由で、表現もそれぞれ違います。それでも、同じ色の組みあわせを使うことで、作品全体に共通した雰囲気が生まれていたのです。

 この気付きは、図画工作科における重要な学びだと感じます。色は、単に「きれい」「好き」という感覚だけで選ばれるものではありません。色には、場所や企業、商品、季節、感情、記憶などと結び付く力があります。子供たちは、自分の手を動かしてつくり、友達の作品を見合う中で、そのことを実感していました。

「本当にお店にあっても違和感がないのか」を確かめたい

 鑑賞の中で何度も出てきた「セブン‐イレブンの中にあっても違和感がない」という言葉は、私にとっても印象的でした。しかし、本当にセブン‐イレブンの店内に置いたときにも同じように見えるのでしょうか。学校の空間ではなく、実際の社会の中、本物のセブン‐イレブンの空間に作品を持ち込んだとき、作品はどのように見えるのでしょうか。

 そこで、身近なセブン‐イレブンにお願いし、子供たちの作品を店内で展示させていただくことにしました。授業の中で生まれた子供たちの問いや気付きを、実際の社会の場で確かめる試みです。学校だけで完結するのではなく、地域の店舗とつながり、作品がまちの中に出ていくことは、子供たちにとって大きな意味をもつ経験になりました。自分たちのつくったものが、普段利用しているお店に飾られる。家族と一緒に見に行くことができる。地域の人たちにも見てもらえる。そうしたことは、製作活動への実感や誇りにもつながります。

セブン‐イレブンの中で開かれた小さな展覧会

 展示が始まると、子供たちの作品は本当にセブン‐イレブンの空間の中に入りました。店内の明るい照明、商品棚、ポスター、案内表示、来店するお客さん。その中に、子供たちがつくったオレンジ、緑、赤の切り絵作品が並びます。すると、教室で話していたとおり、作品は驚くほど自然にその場になじんでいました。色の力によって、店内の風景と作品との間に不思議なつながりが生まれていました。

 子供たちやそのご家族は、実際に店舗を訪れて作品を見ました。「自分の作品が本当にお店に飾られている」「家の人に見てもらえた」「友達の作品も、お店の中で見るとまた違って見える」。学校で見る作品と、地域の店舗で見る作品とでは、見え方が変わります。教室では「図工の作品」だったものが、店内では「まちの風景の一部」のように感じられます。子供たちは、自分たちの表現が社会の中に置かれることで、新たな意味をもつことを体験しました。

セブン‐イレブンの店内に展示されたようす

 また、展示を見たのは子供たちや家族だけではありません。買い物に来た地域の方々も足を止め、作品を見てくださいました。「学校でこんなことをしているんですね」「子供たちの発想が面白いですね」「いつも見ているセブン‐イレブンの色を、改めて意識しました」など、たくさんの感想もいただきました。中には、大人自身が「新たな見方ができた」と話してくださる方もいました。子供たちの作品を通して、大人もまた、普段見慣れた風景を別の角度から見直すことができたのです。

子供の学びが、身近な社会の見方を変える

 今回の実践で特に大切だったのは、図画工作の学びが教室の中だけにとどまらなかったことです。子供たちは、身近な店の色に着目し、その色を自分の表現に取り込みました。そして、できあがった作品を実際の店内に展示することで、自分たちの気付きを社会の中で確かめました。この過程には、いくつもの学びが含まれています。

 まず、子供たちは色がもつイメージの力を体験的に学びました。色は、形や文字がなくても、人の記憶や印象に働きかけます。セブン‐イレブンの色を使うことで、どの作品にも共通する雰囲気が生まれたことは、その力を実感するきっかけになりました。

 次に、身近な社会を新しい目で見るという経験がありました。コンビニエンスストアは、子供たちにとって日常的な存在です。しかし、その日常の中にも、デザインや色彩の工夫があり、人々の記憶に残る仕組みがあります。授業を通して、子供たちは「いつも見ているもの」を「改めて見る」ことができました。

 さらに、自分たちの表現が地域とつながる経験もありました。作品が店内に展示されることで、子供たちの学びは家族や地域の人々に開かれました。学校での活動を地域の方々に知ってもらう機会になっただけでなく、地域の大人たちにとっても、子供の見方や感じ方に触れる場となりました。

 図画工作科の学びは、単に作品をつくることだけではありません。身の回りのものをよく見て、感じて、自分なりに表し、さらに他者と共有することを通して、世界との関わり方を豊かにしていく学びです。今回の授業は、そのことを改めて感じさせてくれる実践となりました。

色は、社会と自分をつなぐもの

 授業のあと、子供たちはセブン‐イレブンの色をこれまでとは少し違った目で見るようになったかもしれません。ただの看板の色ではなく、自分たちの作品とつながった色。普段の生活の中にある色が、自分の表現と結び付いたことで、身近な社会への関心も広がっていったように感じます。

 私たちは、日々たくさんの色に囲まれて暮らしています。しかし、そのひとつひとつを意識することは多くありません。だからこそ、図画工作の授業で立ち止まり、見慣れた色をじっくり見つめることには大きな意味があります。「この色を見ると、何を思い出すのか」「なぜこの色の組みあわせは、こんな印象を与えるのか」「自分がつくった形と色は、どんな場所に置かれるとどのように見えるのか」。そうした問いは、子供たちの感性を育てるだけでなく、社会の中にあるデザインや表現への理解にもつながっていくと考えます。

 色を通して、子供たちは社会と出会い直しました。地域の人々もまた、子供たちの表現を通して、いつもの風景を新鮮に見つめ直すことができたのです。身近な色に気付き、手を動かして表し、実際の社会の中で確かめる。その一連の経験は、子供たちにとって、単なる作品製作を超えた学びになると考えています。

《八嶋孝幸》

八嶋孝幸

 弘前大学教育学部附属小学校主幹教諭。2025年度(令和7年度)文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。教科書編集委員。教育者、研究者、アーティストの3足のわらじを履いて活動中。教育研究で第23回ちゅうでん教育大賞教育奨励賞、第41回東書教育賞入選等受賞。マイクロソフト認定教育イノベーターエキスパート、ミライシードDXエデュケーター等認定。アーティストとしても日本板画院新人賞、石井頼子賞等受賞多数。

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