家庭の経済状況や地域差によって教育機会が左右される現状を踏まえ、文部科学省の松本洋平大臣は2025年11月25日の会見で、「家庭の環境によらず、子供たちが質の高い教育を受けられるよう、グランドデザインに基づく高校教育改革を着実に進めていく」と述べた。あわせて、学校外教育の費用負担や大学の入学金軽減にも言及し、「授業料の無償化だけでなく、学びの格差を生まない総合的な支援が必要」との考えを示した。
松本大臣は冒頭、ユネスコ「世界の記憶」事業における国際登録への新規申請について、日本からは「観世宗家伝来 世阿弥能楽論『風姿花伝』」を推薦したと発表した。ユネスコの専門家における審査を経て、2027年春に登録の可否が決定される予定。
また、愛知県と名古屋市で開催される「アジア競技大会・アジアパラ競技大会」について触れ、「アジアならではの魅力を発信し、地域スポーツや気運醸成にもつなげたい」と述べた。日本開催となる本大会については、特別措置法案を国会に提出予定であり、国の支援内容は「議決後に精査する」と説明。一方で、2018年の国会決議で「国費支出を行わない」とされた経緯にも言及し、議員立法による枠組みの中で支援のあり方を検討する方針を示した。
高校教育改革に関しては、「高校無償化が進む中で、家庭の所得による教育格差をどう是正するか」が焦点だと指摘。「授業料など学校内の費用だけでなく、学校外教育にかかる費用も含めて考える必要がある」と述べ、公立高校改革のグランドデザインに基づく都道府県計画の策定や、基金による支援の仕組みを説明した。また、文部科学省内に設置したタスクフォースで人材育成を含む包括的な教育政策を検討中であることも明らかにした。
さらに、私立大学での入学金負担軽減の取組みに関して、民間調査で該当制度を明記している大学が少ない現状を踏まえ、「文科省からの通知に基づく取組みの広がりを期待している」と言及。全国の私立大学を対象とするアンケートを11月に実施し、結果を公表のうえ、好事例の共有を進める方針を示した。また、東京都中野区の学校で発覚した教員間のセクシュアルハラスメント事案については「東京都教育委員会を通じて状況を確認し、必要な指導助言を行う」と述べ、教育現場でのハラスメントはあってはならないとしたうえで、対策防止に引き続き取り組む姿勢を示した。







