教育機関におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、単なるツールの導入ではない。それは、大学という組織の根幹にある働き方や意思決定のあり方を再構築し、未来の教育を創造していく挑戦でもある。
香川大学は「教育DX」「研究DX」「業務DX」を三位一体で推進する「デジタルONE構想」を掲げ、全学的な改革を加速させている。同大学の創造工学部創造工学科 情報コース教授でDX推進研究センター長の八重樫理人氏、創造工学部情報コース教授でDX推進研究センター所属の山田哲氏、情報部情報システム課課長の末廣紀史氏、情報部情報システム課木村悠佑氏に話を聞いた。
地方大学の課題と内製化という選択
香川大学では、DX推進のために情報化推進統合拠点を設置し、その下に教育情報推進支援センター、DX推進研究センター、情報メディアセンター、サイバーセキュリティセンターの4センターを置いている。これらのセンターを統括する役割として、八重樫氏がCDO(Chief Digital Officer:デジタル統括責任者)という役職を担っている。国立大学にCDOを設置する例は珍しく、大学として情報化とDX推進に本気で取り組む姿勢が表れているといえよう。

香川大学のDXを語るうえで、まず理解すべきは、大都市圏の大学とは異なる地方大学ならではの課題だ。たとえば、潤沢な資金をもつ大規模大学であれば大手ベンダーに高価なシステム開発を委託できるのに対し、地方の国立大学である香川大学には、「そのような選択肢はなかった」と八重樫氏。この状況を「大都市圏と地方では課題が異なり、DXの進め方も違う」と語る。