学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第214回のテーマは「子供の自殺を防ぐにはどうしたらよいか」。
子供の自殺者数が過去最多
厚生労働省が2024年の自殺者数を発表しました。大人を含めた全体の数は減っているのですが、子供(小中高生)の自殺者数は過去最多となっています。内訳は、小学生が15人、中学生が163人、高校生が349人となっており、男性が239人、女性が288人です。子供の自殺者はコロナの流行時の2020年に過去最多となり、その後、高止まりという状況です。
現在、高校生は約300万人います。自殺した人はその中の349人なので、割合としてはおよそ1万分の1(0.01%)となります。割合としてはとても小さなものですが、これは「氷山の一角」と捉えることができるのだと思います。見えている部分(自殺者数)は、その背後にあるもの(何らかの問題を抱えている子供)の一部を表しています。見ていている部分が増えているということは、背後にあるものも増えていると考えるのが良いでしょう。現在の子供の多くがさまざまな悩みを抱えていることを表しているのでしょう。
ところで、コロナの流行により子供がデジタルメディアと関わる機会が増えました。学校においては、GIGA端末が活用されています。家庭でもスマホやタブレットに触れる時間は増えています。そういったものと子供のトラブル(自殺を含む)の増加など関連させ、デジタルメディアの使用は減らすべきだという考えがあります。「デジタル機器は使わせない方が良い」「時代の流れなのでどんどんデジタル機器を使わせていくべきだ」という対立の構図ではなく、色々な議論の中でグレーでの最適を探ることが大切なのだと思います。
自殺の増加に関して、専門家は真面目な子供に問題が生じる可能性について危惧しています。嫌なことがあっても我慢して登校するような真面目な子どもが追い詰められて自殺に至ってしまうこともあるということです。学校において何か嫌なことがあった際に、良いのか悪いのかは別として学校に行かない(不登校)選択をすることができる子供は自殺という最悪な状況に至らずに済むのかもしれません。あまり自分の思い(辛さ、悲しさなど)を外に出さない子供の場合、その思いを把握することはなかなか難しいことです。
今回のテーマのようなことは、学校においては最優先で対応すべき事項です。ただ学校の多忙化などもあり、それができていない場合があるのも事実です。最悪なことを避けるべく関係者は協力して取り組む必要があります。教員は学校の子供の姿しか見ることはできません。家庭のようすを知っている親と連携を図り、またさまざまな外部機関と連携を図っていくことが大切でしょう。
江戸時代の前後に外国人などが日本の子供について述べた記録が残っています。安土桃山時代から江戸初期には宣教師など、幕末から明治初期にはお抱え外国人などがさまざまな記録を残しており、その中で「日本は子供の天国だ」と指摘しています。社会の中で子供がとても大事にされていたことが推測されます。果たして、今の日本に暮らす子供の中で「天国だ」と思っている人はどの位いるのでしょうか。幸せだと思える子供が増えていくように周りにいる大人は努力をしていく必要があるでしょう。
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