2023年度の小中高などにおけるいじめの認知件数が73万2,568件と過去最多となったことが2024年10月31日、文部科学省が公表した「2023年度(令和5年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で明らかになった。いじめの重大事態、不登校も過去最多を更新している。
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」は、児童生徒の問題行動等について、全国の状況を調査・分析することにより、生徒指導上の取組みを一層充実すること目的として、文部科学省が毎年調査しているもの。調査対象は、国公私立小・中・高校・特別支援学校、都道府県・市町村教育委員会。
小中高校、特別支援学校におけるいじめの認知件数は、前年度より5万620件増(7.4%増)の73万2,568件。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年度に一旦減少したが、その後3年連続増加。過去最多の認知件数となった。この内、いじめの重大事態の発生件数は1,306件で前年度より387件増加。過去最多となった。
増加の背景として、いじめ防止対策推進法への理解や、いじめおよび重大事態の積極的な認知に対する理解が広がったことが要因であると文部科学省は分析。アンケートや教育相談の充実、SNSなどのネット上のいじめの積極的な認知などにより、いじめを把握しやすい状況になりつつある。
一方で、学校としていじめの兆候を見逃してしまう、教員が1人で抱え込んでしまうといった組織的な対応への課題により、重大事態に発展したケースもみられたという。2023年度末時点でのいじめの解消状況は56万7,710件で、全体の77.5%は解決している。
小中学校における長期欠席者数は、前年度比3万2,792人増の49万3,440人。この内、不登校児童生徒数は前年度比4万7,434人増の34万6,482人で、11年連続増加、過去最多となった。コロナ禍以前の2018年度の不登校児童生徒数16万4,528人と比較すると、2倍以上に増えている。
高校における長期欠席者数は前年度比1万7,957人減の10万4,814人。この内、不登校によるものは前年度比8,195人増の6万8,770人。不登校生徒は小中学校同様増加傾向にあり、過去最多となった。
増加傾向に歯止めの効かない不登校の状況について、小中学校では保護者の学校に対する意識の変化や、コロナ禍の影響による登校意欲の低下、特別な配慮を必要とする児童生徒に対する早期からの適切な指導や必要な支援に課題があったことなどが要因と考えられる。高校においては、進学やクラス替えなどにともなう不適応の増加、コロナ禍の影響による登校意欲の低下などが考えられるとしている。
小中高校から報告のあった自殺した児童生徒数は、前年度比14人減の397人。前年度から減少したものの、児童生徒の自殺が後を絶たないことは、極めて憂慮すべき状況といえる。
自殺した児童生徒が置かれていた状況(複数回答可)については、「不明」が186人で最多。このほか「家庭不和」65人、「精神障害」61人、「父母等の叱責」42人、「進路問題」38人、「友人関係(いじめを除く)」31人と続いた。
文部科学省は、日常生活が戻っていく中で、子供たちがさまざまな悩みを抱えたり、困難な状況に置かている状況を危惧し、引き続き周囲の大人が子供たちのSOSの早期発見に努め、組織的対応を行い、外部の関係機関などと対処していくことが重要であるとの方針を示し、具体的な対策を取るための予算を令和7年度概算要求として計上するとしている。