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【相談対応Q&A】夏休みに生活のリズムが崩れてしまった

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第192回のテーマは「夏休みに生活のリズムが崩れてしまった」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第192回のテーマは「夏休みに生活のリズムが崩れてしまった」。

「睡眠」を中心とした生活リズムが
大事

 夏休み明けは、学校(教員)にとっても、保護者にとっても難しい時期です。統計では、登校しぶりが起こりやすい時期ですし、残念ながら一年の中でもっとも子供の自殺が多い時期です。夏休みにおける生活リズムにおいて大事になるのが「睡眠」を中心とした生活リズムです。登校しぶり・不登校に関する調査でも、睡眠のリズムが崩れたことにより学校への遅刻、欠席が増えていったというもものがあります。

 マズローというアメリカの心理学者が「欲求階層論」というものを提唱しています。人の欲求を5段階で示しています。その一番下になるものが「生理的欲求」というものです。睡眠や食事などの人が生きていくうえで必要とされるものについてです。そういったものが満たされていない状態ではさまざまなことに支障が生じます。たとえば、子供が夜遅くまでゲームなどをしていて寝不足の状態で学校に来ていたとしたら、いくら教員が授業のために良い準備をしていたとしても、子供は睡魔に負けてしまうことが多いでしょう。

 今の子供達は昔と比べて夜に遊ぶツールをいくつも持っています。親世代の場合、まだ子供が自分用のスマホなどは持っていないことが多かったです。さらに上の世代では、夜になると子供が遊ぶことができるものはほとんどありませんでした。そういったものが今は大きく変わっています。子供が夜に楽しむことができるようなもの(動画、ゲーム、SNSなど)が子供のすぐそばにあります。そういったものと上手に付き合っていくことが大切になります。

 睡眠や食事などの生活のリズムの維持は基本的には家庭が担当する部分です。そういったことをもっと学校は家庭に伝えていくと良いと思います。年度始め、長期休業前などのタイミングで前述の欲求階層論などを話題にし、家庭の役割の重要さについて伝えていくのです。子供向けにも色々な機会で伝えていきます。こういったことは学校教育活動の基盤となるものです。そういった部分を丁寧に取り組むことは、学校教育活動全体の質に大きく影響を与えると私は思っています。

早寝早起き、昼寝をしない

 ところで、保護者から生活リズムに関する相談を受けた場合、次のようなアドバイスをしていくと良いでしょう。生活のリズムを作る際、大事になるのは「起きる時間」です。夜遅く寝るような状況でも、無理やり朝早く起きることでリズムをリセットすることができます。その際、昼寝などをしないようにして、夜は早めに寝るようにすると良いリズムを作ることができるようになります。私は小学校の担任をしているころ、長期休業明けの初日の宿題は「早寝早起き、昼寝をしない」でした。生活リズムを整えることがその時期には何よりも大切だからです。

暑中見舞いや一斉メールで意識付け

 また、「意識付け」をしていくことも重要です。私は小学校の教員をしているころ、夏休みに「暑中見舞い(残暑見舞い)」をクラスの子供宛に出していました。「元気にしていますか?もうすぐ夏休みも終わりますね。生活リズムを整えてください。会えることを楽しみにしています。」というような内容でした。葉書は親も見るということがポイントです。生活リズムを整えることは、親の意識も大切です。暑中見舞いの葉書は親へのメッセージでもあったのです。今の時代であれば、GIGA端末の連絡ツールや親向けの一斉メールなどを使っていくことが良いでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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