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【相談対応Q&A】黙食を見直してほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第109回のテーマは「黙食を見直してほしい」。

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画僧はイメージ
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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第109回のテーマは「黙食を見直してほしい」。

コロナ禍の給食

 新型コロナウイルスの流行は2022年12月現在、第8波に入り、地域によっては過去最多の新規感染者数が報告されています。ただ、日本の社会における新型コロナウイルスの扱いは以前とは明らかに変わってきています。政府は「行動制限は求めない」「屋外ではマスクを外すと良い」等のアナウンスをしています。そういった中で学校に関することで話題になっているものが「給食時の黙食」です。

 「給食時の黙食」は、新型コロナウイルスの感染予防のために取り組まれていたものです。政府の新型コロナ対策の基本対処方針で「飲食はなるべく少人数で黙食を基本とする」と明記されていたこと等と関係しています。文部科学省も同様の通知をしていました。それが2022年11月25日に変更され、学校の給食について「座席配置の工夫や適切な換気等の措置を講じたうえで、給食の時間において、児童生徒等の間で会話を行うことは可能」となりました。

必ずしも黙食を求めてはいない

 文部科学大臣は会見で「従来も黙食は求めていなかった」と述べています。これまでの文科省の通達文書には確かに「黙食」という言葉はなく「適切な配慮をしていれば子供が会話をしながら食べていても良い」という解釈にもなります。自治体によっては「黙食の徹底」を求めているところもありましたが、多くの自治体ではそういった強制は求めてはいなかったです。文科省も自治体も必ずしも黙食を求めてはいなかったのですが、ほとんどの学校で黙食が行われていました。

学校長が判断・決定

 文科省の通達は学校に対して拘束力を有しない場合も多いです。通知の文言が「・・・推奨する」「・・・が望ましい」等となっていることが多いです。文科省には強制力は無く、そのため曖昧な表現にしていることが多いです。そういった状況においては、学校長が判断、決定していくことが必要となります。

 今回の「給食の食べ方」だけではないのですが、学校に関することで学校長が決定できることは多くあります。たとえば、教育課程の編成等がそれに当たります。学習指導要領において教えるべき内容については法的に規定されています。しかし、それを実際に運用する際の具体的なことは学校で決めることができます。教育課程の編成以外にも学校長の判断で決めることができるものがあります。学校教育活動の多くのことに学校長に裁量、権限があります

 しかし、残念ながら学校が独自性を発揮するような形にはなっていない場合が多いです。「横並び」を強く意識し、変に飛び出ることを嫌うという考え方です。常に周りの学校がどのようにしているかを気にして、そこから違わないことに大きなエネルギーを使います。そういった場合、レベルの高い所ではなく、低い所に合わすことが多く、全体として質の向上にはつながらなくなってしまいがちです。

 子供には「個性を!」「自分の考えを大切に!」と伝えている学校(教員・学校長)が多いです。その学校(教員・学校長)が「個性がなく」「自分の考えを大切にしていない」という状況は何かの悪い冗談のようです。校長のリーダーシップによって学校をより良いものとしている実践はいくつもあります。私が何度か学校を訪れて学ばせてもらった住田校長先生(現湘南学園学園長)による実践(横浜市立永田台小学校、日枝小学校)はその典型です。そういった学校から良い点を見習い、生き生きとした学校が増えていくことを願います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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