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在外教育施設への派遣経験、教師の能力向上に寄与

 文部科学省は2022年6月23日、在外教育施設に派遣された教師に係る派遣効果に関する調査・分析について公表した。在外教育施設への派遣経験が、多文化・多言語環境における指導能力等、教師の資質・能力の向上につながるエビデンスが示されている。

教育行政 文部科学省
カリキュラム・マネジメント能力の平均値の推移
  • カリキュラム・マネジメント能力の平均値の推移
  • 学校の管理・運営能力の平均値の推移
  • 多文化・多言語環境における指導能力の平均値の推移
  • 男女別の派遣効果
  • 年齢層別のカリキュラム・マネジメント能力に関する派遣効果
  • 年齢層別の学校の管理・運営能力に関する派遣効果
  • 年齢層別の多文化・多言語環境における指導能力に関する派遣効果
 文部科学省は2022年6月23日、在外教育施設に派遣された教師に係る派遣効果に関する調査・分析について公表した。海外の日本人学校等の在外教育施設への派遣経験が、多文化・多言語環境における指導能力やカリキュラム・マネジメント能力等、教師の資質・能力の向上につながるエビデンスが示されている。

 在学教育施設とは、海外に在留する日本人の子供のため、日本国内の学校教育に準じた教育を実施することをおもな目的として海外に設置されたもので、日本人学校、補習授業校、私立在外教育施設の総称。文部科学省では、在外教育施設に現職派遣教師、シニア派遣教師、プレ派遣教師を派遣している。グローバル化が進展する中、在外教育施設への教師派遣を通じて、グローバル社会に対応できる教師を育成し、帰国後の国内での活躍を促進していくことも重要になっている。

 そこで今回、文部科学省はエビデンスに基づく政策立案(EBPM:Evidence-Based Policy Making)を推進する総務省との実証的共同研究の一環として、在外教育施設への派遣経験が教師の資質・能力等にどのような効果を与えるかについて、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託し、実証的に研究。結果を報告書にまとめ、公表した。「教師向けアンケート調査」「管理職向けアンケート調査」「在外教育施設派遣教師および教育委員会へのヒアリング調査」の3つの調査から、在外教育施設への派遣効果とメカニズムを検討している。

 このうち、教師向けアンケート調査によると、「派遣経験あり」の教師と「派遣経験なし」の教師の平均値を比較すると、「カリキュラム・マネジメント能力」「学校の管理・運営能力」「多文化・多言語環境における指導能力」のいずれにおいても「派遣経験あり」の教師の平均値が高くなった。派遣によって、これらの能力が向上した可能性が示唆され、教師の資質・能力の向上につながるエビデンスが示された。

 派遣効果を属性別にみると、男女間で全体の傾向に大きな違いはみられなかったが、年齢層別ではカリキュラム・マネジメントに関するアウトカムは30代の派遣効果がもっとも大きく、50代の派遣効果は30代の5~6割程度の効果量であった。多文化・多言語環境における指導能力に関するアウトカムは、いずれの年齢層でも有意に正の効果が確認されたが、効果量がもっとも大きいのは30代だった。一方、学校の管理・運営能力に関するアウトカムは50代の派遣効果がもっとも大きかった。

 管理職向けアンケート調査においても、派遣経験のある教師と派遣経験のない同年代の教師を比較した場合、68.9~84.5%は派遣経験のある教師のほうが多文化・多言語環境における指導能力が高く、カリキュラム・マネジメント能力についても72.7~74.8%は派遣教師のほうが高いと評価。教師向けアンケート調査の結果と整合的な傾向が確認された。

 分析結果を受け、派遣教師の7割程度が男性で、教師になる以前から海外経験のある人が多く派遣されていることから、在外派遣が有益な機会であることを踏まえると、女性や海外経験のない教師も派遣されやすい環境整備を通じて、派遣の機会を広げていくことが重要であり、結婚・出産・育児等のライフプランに配慮した制度の運用も必要と指摘。在外教育施設への派遣によって多文化・多言語環境における指導能力が顕著に向上することが示されていることから、外国人児童生徒等への指導の場面等で派遣経験者が活躍できる可能等も示唆している。

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《奥山直美》

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