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【クレーム対応Q&A】全校体育が苦痛

 子供の体力は親世代と比べ、低下しています。学校現場や自治体では、さまざまな方策が練られ、実行されています。その1つが「全校体育(業間体育・業前体育)」です。今回のテーマは「全校体育が苦痛」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレームや相談。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第83回のテーマは「全校体育が苦痛」。

子供の体力が低下


 子供の体力は親世代と比べ、低下しています。学校現場や自治体では、さまざまな方策が練られ、実行されています。その1つが「全校体育(業間体育・業前体育)」です。

 子供の体力が低下していることは多くの研究者等が指摘をしています。社会全体が便利な暮らしになってきており、子供にとって3つの間(時間、空間、仲間)が減ってきていることが影響しているとされています。

体力向上に向けた取組み


 そういった状況において、自治体や学校も何もせずに眺めている訳ではありません。体力向上に向けて、さまざまな方策が練られ、それらは実行に移されています。自治体は子供が遊びやすい公園を整備したり、学校は子供が体を動かす機会が増えるようカリキュラムの工夫をしたり、遊具の整備等を行ったりしています。

 そういった学校での取組みの1つに「全校体育(業間体育・業前体育)」があります。1時間目の前の朝の時間(15分程度)や休み時間等に全校で集まり、運動に取り組みます。取り組む種目は、新体力テストの結果で各学校が弱い(平均値よりも低い)とされるものであることが多いです。音楽に合わせ5分間走る「5分間走」等に取り組んでいる学校が多いようです。

全校体育の副作用


 全校体育に取り組むと、学校全体としての体力テストの平均値は上がることが多いです。もし取り組んでも数値が向上しない場合は、取り組み方に問題があるということでしょう。平均値が上がることは良いことなのですが、副作用のようなものが出ることがあります。それが今回のテーマである「全校体育が苦痛」というものです。

 私が以前勤めていた小学校でも全校体育に取り組んでいました。決まった曜日に取り組んでいたのですが、その曜日は遅刻が多かったです。また、体調不良で見学をする子供も少なくない数がいました。家庭訪問等でも、親から「全校体育のある日は子供が朝からぐずってしまい、大変」等の話を聞くことがよくありました。

 子供の体力を向上できればという思いで取り組んだ「全校体育」によって、運動嫌いの子供が増えてしまうという状況になっていました。私が取り組んでいる生涯スポーツに関する研究では「子供時代に運動を楽しいと感じていた子供は、大人になってからも運動が好きで、運動に取り組んでいる」という結果が出ました。また、他の研究では「大人になってから定期的に運動に取り組んでいる人は、生活習慣病になりにくく、寿命も長くなる」というものもあります。

 それらの研究をまとめると「子供時代の運動への関わりがその人の生涯に影響を与える」ということになります。さらにそれは医療費や介護費等の社会保障費にも影響を及ぼします。子供時代に運動を好き、楽しいと感じることができるかどうかということは、個人の問題だけでなく、社会全体の問題として捉える必要があると思います。子供に関わる大人(保育者や教員)は、そういった意味で大きな責任があると言うことができるでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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