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3自治体の事例から見えた利点と課題…校務の情報化に関する専門家会議

 2022年2月3日、文部科学省は第2回目となる「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」を開催した。校務効率化、教員の働き方改革に向けた今後の方向性について議論が交わされた本会議のようすをレポートする。

ICT機器 校務
春日井市内の小中学校におけるクラウド活用状況
  • 春日井市内の小中学校におけるクラウド活用状況
  • 春日井市内の小中学校における校務の負担軽減状況
  • 鴻巣市のICT機器導入による変化の声
  • 港区の中学校で校務でPCを使用している時間の分布
 2022年2月3日、文部科学省は第2回目となる「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」を開催した。2021年12月23日に開催された第1回に引き続き、校務効率化、教員の働き方改革に向けた今後の方向性について議論が交わされた本会議のようすをレポートする。

 本会議は、GIGAスクール構想が進展し、1人1台端末の活用が進む中、学校における働き方改革をより進めるための校務の情報化の在り方や、校務系システムのデータ連携の可能性等について、今後の方向性を検討することを目的としている。第2回目の今回は、校務の情報化の状況について、Chrome OS、Windows、iPadOSと、異なるOSを採用している3つの自治体が報告を行った。

コロナ禍で便利さを実感…愛知県春日井市



 始めに、愛知県春日井市立高森台中学校 校長の水谷年孝氏より、春日井市におけるGoogleのクラウドサービスを活用した校務の情報化の状況が報告された。

 春日井市では、日常的に1人1台端末環境を活用しているが、校務の情報化の取組み自体は1999年にスタートしており、家庭連絡アプリや校務支援システム、CMSによる業務改善を実施してきたという。2020年3月、市内の校長間での情報共有・意見集約を目的に、Googleスプレッドシートの活用を開始。2020年5月には、新型コロナウイルス感染拡大による休校中の意見集約にもGoogleスプレッドシートを用いた。これをきっかけに、クラウド活用による協働編集の便利さを実感し、積極的に授業でも活用することを目指し始めた。

 現在、春日井市では、授業におけるGIGA端末活用事例をGoogle Chat上で共有したり、職員会議や学年会議、校内研修などの資料をすべてGoogle Classroomで共有したりと、スムーズな情報共有とペーパーレス化を図っている。また、児童や生徒への資料配布においても、「保健だより」などの資料をGoogle Classroomで配布しているほか、これまで紙で行っていた調査やアンケートをGoogleフォームで実施している。



 春日井市内の全小中学校(53校)のクラウド活用状況に関する調査では、すべての小中学校が「Googleスプレッドシート等での意見集約」「Google Classroomでの資料共有」「Googleフォームで調査・アンケート」を行っていると回答している。



 また、クラウド活用による校務の負担軽減については、「20%ほど軽減された」との回答がもっとも多かった。クラウド活用によって改善されたことについて、具体的には「情報の共有が素早くできるようになった」「校務の負担軽減と会議の時間短縮につながっている」などの声があがった。

 クラウド活用によって校務の負担が軽減され、効率的になっていることを多くの教職員が実感しているものの、現状で抱える問題点として、従来の校務支援システムとクラウドサービスで重複する校務があり、使い分ける必要があることがあげられる。今後は、さらなるクラウド活用を前提として、校務支援システムの改善や、制度の見直しなどが求められる。

 委員からは、「共有する情報が増えることで、困っているケースはないか」との質問があがった。水谷氏は、アンケート結果がこれまでより蓄積されるようになったものの、その情報を分析して有効に活用していく力が不足していることを実感している教職員が多い、と回答。校務の情報化が進むにつれ、教職員にとっては新たな勉強、スキルアップの必要性が生まれているようだ。

ICT導入で教職員の意識にも変化…埼玉県鴻巣市



 続いて、埼玉県鴻巣市教育委員会の新井亮裕氏が、鴻巣市のICT環境整備の経緯と、Microsoftの標準ソフトを活用した校務の情報化の取組みについて報告した。

 鴻巣市の取組みの背景には、現行のICT機器の入替え時期が近づき、当時の環境が抱えるいくつもの課題が浮き彫りになっていたことがあったという。当時の環境整備の考え方では、オンプレミスのため端末の利用場所が制限される、校務・校務外部・学習という用途に合わせてPCやネットワークを使い分けなければいけない(3層分離)、教職員の勤務状況や児童・生徒の出欠状況を紙で管理しているため煩雑、などの課題があった。

 鴻巣市は、令和元年9月に「鴻巣市教育情報化推進計画」を策定。「先生も子供もPCを文房具のようにいつでもどこでも使用できる」というコンセプトのもと、SINET(学術情報ネットワーク)を通じたフルクラウド化、校務の電子化、ゼロトラストネットワークの考え方を採用したセキュリティなどの実現を目指し、環境整備を進めてきた。

 鴻巣市における校務の情報化には、Microsoft 365が活用されている。調査やアンケートにはFormsを、欠席連絡にはFormsに加えてPower Automateによる自動化を活用。教職員は手作業での集計が不要となり、保護者はスマートフォンなどで回答するだけでよくなったことで、負担が軽減された。

 従来は紙の日報や会議資料などで共有されていた情報は、Teamsに投稿するように。資料印刷の負担が軽減されただけでなく、これまでは職員会議中に行っていた軽微な連絡をTeamsでの共有で済ませることで、職員会議では重要な伝達事項や議論に集中できるようになったという。



 教職員へのアンケートでは、「校務の効率化により、時間に余裕が生まれ、子供と向き合う時間が増えた」「PCを活用するのが当たり前となり、学校全体のICT活用頻度が高くなった」などの声があがった。春日井市同様、校務における活用で便利さを実感したことで、学習にもICTを活用しようという良い流れが生まれており、「PCを文房具のように使う」というコンセプトが実現しつつあると言えるだろう。

管理職の視点では、「他校との横の繋がりが増えた」「多くの業務がデジタル化され、負担が軽減された」という声が多くあがっている。また、市内のある校長先生からは、ICT導入により、「挑戦的な取組みも、失敗を恐れずにやって良い」という考え方をもつなど、「教職員の意識」も確実に変化してきている、との声があがった。

1人1台iPadを配備、Twitterの活用も…東京都港区



 次に、東京都港区教育委員会の下平良平氏から、港区の小中学校における教職員の校務の現状について報告が行われた。港区では、2種類の校務用端末を配備している。教職員が成績処理等の機微な情報を扱う教員用端末として職員室にPC(Windows 10)を配備。学習用端末は教室に配備しており、電子黒板と接続してデジタル教科書や教材等の提示に活用している。令和2年10月には、1人1台のGIGA端末としてiPadを配備。児童・生徒だけでなく教職員にも1人1台の配備を実現しており、自宅からの使用も可能となっている。

 iPadを活用することで、資料配布や面談、保護者会、研修、教員間の情報共有などの多くがオンライン化された。たとえば三者面談では、教員は学校、生徒は自宅、保護者は職場から参加するというケースもあるという。教員からは、オンライン化によって時間に余裕が生まれ、子供に向き合う時間が増えたという声があがっている。

 すべての普通教室や特別教室等には電子黒板などの大型提示装置に加え、iPadと無線接続可能なApple TVを配備しており、誰でもすぐにGIGA端末から教材などの資料を投影することが可能だ。

 また、令和4年度からインターネット経由で一部の校務系情報にアクセスできるよう、二要素認証のシステムを構築中である。これにより、教員が教室で出欠席情報や児童・生徒の評価情報をiPadから入力することを想定しているという。

 教員がおもに使用しているクラウドサービスはMicrosoft Teamsだ。現時点では、新型コロナウイルス感染拡大によるリモートワークに対応するため、iPadやその他の端末からでもアクセスが可能で、教員同士での情報共有や資料共有に積極的に活用されている。

 学校の情報発信については、学校のホームページや配信メールのほか、NTTコミュニケーションズが提供するクラウドサービス「まなびポケット」の保護者連絡機能で欠席連絡を受信したり、学校だより等を配布したりしている学校もある。また、GIGA端末に加え、各学校にはiPhoneを1台ずつ配備しており、Twitterを通じた情報発信も行っているとのことだ。



 港区の調査によれば、令和3年度、1日に教員が校務でPCを使用している時間でもっとも多いのは「3時間以上4時間未満」だった。使用時間の割合は、年々増加傾向にあるという。また、ICT機器の導入によって校務が効率化されたと回答した教員の数は、令和2年度と比べ、小学校で5倍、中学校で7倍と大きく増加した。港区でも、他の2つの自治体同様、教員がICT機器、クラウドサービスの恩恵を強く感じていることがわかる。

 最後に、港区では令和4年度以降、「Next “GIGA”」と位置付けた取組みとして、学力テストのCBT化や、家庭と学校の連絡機能の強化など、教員が働きやすい環境を推進していくことが説明された。

 本会議で紹介された3つの自治体の事例から、GIGAスクール構想の進展、クラウドサービスの活用により期待される校務の効率化の好例が具体的に示された。その一方で、機微情報の取扱いや従来の校務支援システムとの使い分け、制度見直しの必要性など、クラウド活用を進めることで発生した新たな課題も明らかになってきた。文部科学省をはじめとする関係省庁と教育現場が密にコミュニケーションを取り、絶えず改善を続けることが求められている。

その他、関係省庁からの情報共有



 本会議ではその後、デジタル庁および文部科学省から、教育データ利活用ロードマップに関するQ&Aやポイント、教育データの標準化について議論が進められていることが説明された。また、文部科学省から、教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの一部改訂の方向性について、教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査について説明が行われた。これらの詳細は、記事下部の関連リンクより資料を確認いただきたい。
《多賀秀明》

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