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【クレーム対応Q&A】登下校で子供がマスクをしていない

 コロナ禍の学校現場では、対応にさまざまな難しさがあります。今回のテーマはそういったことと関連し、「登下校で子供がマスクをしていない」というものです。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第40回は「登下校で子供がマスクをしていない」。

マスクをすることの弊害もある


 新型コロナウイルスの世界での流行は1年以上も続いています。日本ではワクチンの接種が進み、少し光明が見えてきていますが、まだ予断を許さないという状況です。学校現場では、対応にさまざまな難しさがあります。今回のテーマはそういったことと関連し、「登下校で子供がマスクをしていない」というものです。

 私は大学での授業で「レクリエーション実技」というものを担当しています。保育園、幼稚園、小学校、特別支援学校等で働くことを目指す学生が対象の授業です。鬼ごっこ等の運動遊びを実際に体験しながら、指導法等を学んでいく授業です。その授業の内容はコロナ禍の状況において少し変化しています。以前であれば、息が上がるまで走り回るような活動も入れていましたが、現在はそこまで激しい活動は行わないようにしています。

 やはりマスクをしているということは、人が活動するにあたってさまざまな影響があります。2021年2月には大阪府の小学校で体育の時間に持久走に取り組んでいた際に子供が亡くなるという事故が起こっています。その子供は基礎疾患がなく、走る時にマスクをしていたとのことです。

 マスクをすることは、新型コロナウイルスの感染予防においてとても意味のあることだとされています。ただ、マスクをすることの弊害、たとえば先ほど触れたように運動時に何らかのアクシデントを誘発する可能性が高くなることも事実でしょう。これからの季節は暑い日が続きます。コロナ以前のマスクをしていなかった日々においても暑さによる熱中症等の危険がありました。この夏は多くの人がマスクをしている状況です。熱中症等への対応をしっかりとする必要があるでしょう。

学校の方針を外部に発信していく


 ところで、今回のテーマである「登下校の際、子供がマスクを付けていない」というクレームが学校に寄せられた場合の対応についてですが、暑い時期の登下校においては状況に応じてマスクは取っても良いのではというのが私の考えです。学校によっては必要に応じて、子供にマスクを外しても良いと指導している所もあります。

 現在のような状況において、学校としては子供がマスクを外すことについて積極的に外部に発信していくべきなのではないかと思います。学校便り、学校ホームページ等に「状況に応じてマスクを外すように子供には指導しています」と載せていくのです。登下校時は状況によっては三密になりにくいです。1人になるような状況もあります。そういった状況においては、熱中症等へのリスクを考え、マスクを取ることは合理的なことであるはずです。子供がそういった行動を取りやすくするために学校として「マスクを取る場合もある」ということを情報発信していくのです。

 そのためには子供への指導や保護者への情報発信は重要です。新型コロナウイルスへの警戒も重要ですが、それと同様に熱中症等への警戒も重要です。そういったことをさまざまな場で伝えていくのです。特に子供への指導はとても重要です。子供は一度言われたこと、今回のケースでは「コロナの感染予防のためにマスクをつけること」ということを頑なに守ろうとします。暑くとも、苦しくともマスクを外さないような子供もいます。私の知り合いのある校長は「マスクをつけさせる指導よりも、マスクを外させる指導の方が難しい」と話していました。

 今回の新型コロナウイルスの問題は、それぞれの学校の置かれた地域の感染状況等によっても対応が違ってきます。それぞれの学校が自分たちの学校の置かれた状況をしっかりと把握し、学校としてどうしていくのかということを判断し、それらを情報発信していくことが大切でしょう。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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