文部科学省は2021年6月17日、飛鳥新社の記事に対する抗議文書を公表した。「危機に立つ教科書検定 教科書調査官が突然泣き出した」と題した月刊Hanadaの2021年7月号掲載記事について、事実誤認と強く抗議し、記事の撤回を求めている。 文書は、文部科学省初等中等教育局教科書課長名で、飛鳥新社代表取締役に宛てた6月17日付のもの。月刊Hanada7月号の記事で、教科書調査官が検定意見の趣旨等を伝達する際に「泣き出した」等と記載されたことについて、「記事にあるような、泣いたという事実はなかった」と指摘。この「泣いた調査官」についての「自分たちのやっていることの理不尽さ、矛盾に耐えられなかったのである」等の記述についても、「本人の思いとは異なる主観的な憶測と言わざるを得ないものと確認された」としている。 さらに「歴史小委員会という数名の学者からなる機関」「(検定審議会の議事録が作られていないことに関し)他の省庁なら考えられない」との記述についても事実誤認と指摘。「令和2年度の歴史小委員会の委員数は14名」「審議会等の整理合理化に関する基本的計画においては『行政処分、不服審査、試験等に関する事務を行う審議会等で、会議、議事録または議事要旨を公開することにより当事者または第三者の権利、利益や公共の利益を害するおそれがある場合は会議、議事録または議事要旨の全部または一部を非公開とすることができる』とされており、現に他省庁の審議会でそのような運用をしている例もある」と具体的に反論している。 文書で文部科学省は「教科書調査官や検定制度に関して、事実誤認の内容や憶測に過ぎない内容を事実であるかのように記事にすることは、教科書調査官の名誉を傷つけるだけでなく、教科書検定制度ひいては検定を経た教科書に対する信頼を不当に貶める」と非難。遺憾の意を表明するとともに強く抗議し、記事の撤回を求めている。