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【クレーム対応Q&A】子どもの万引きに教員が呼び出される

 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第16回は「子どもの万引きに教員が呼び出される」。

万引き対応は保護者の役割


 本来家庭の役割であるものでも色々な事情で学校へ連絡が来ることがあります。たとえば、子どもによる万引きが発覚した際に、警察や保護者へ連絡するのではなく、学校へ連絡をしてくることなどです。

 特に長期休業中(春休み、夏休み、冬休み)には、万引きなどのトラブルが起こることが増える傾向にあります。学校に通わないことで、子どもが自分で自由になる時間が増えます。そのことで、万引きなどを含めたさまざまなトラブルに繋がる行動をとる可能性も増えてしまう場合があります。

 実際、学校に万引きなどの件で連絡があった際の対応についてですが、これは「親に連絡をし、対応してもらう」ことがとるべき対応でしょう。教師(学校)が何にでも対応するということは違うのだと私は思っています。日本では、テレビドラマなどの影響もあり、こういったケースにおいて、教師(学校)が親身になって何にでも対応することをよしとするような雰囲気があります。熱血の先生が、子どもが引き起こすさまざまな問題(万引き、喧嘩、家出など)に寝る間も惜しんで駆けずり回るようなイメージです。

 実際、現在の学校の置かれた状況においては、そういったドラマのようなことができる状況ではありません。必要に応じて、警察、児童相談所、その他の行政機関などと協力し、役割分担をしながら、1つ1つのできごとに対応していくことになります。

学校の役割を整理する


 学校の業務量は現在、いっぱいいっぱいの状態です。以前、私はその状態を「空気を目一杯入れてパンパンに膨らんでいる風船」という例えを使ったことがあります。割れる寸前まで空気が入っている風船は少しの刺激でも破裂してしまうことがあります。現在の学校はまさにそういった状況です。

 学校で働く教員のうち精神疾患で休職した人が令和元年度(2019年度)には5,478人おり、過去最高だったという報告が文部科学省から出されています。年代別で50代以上が最多で1,789人となっています。また、文部科学省が発表した「学校教員統計調査」によると、平成30年度(2018年度)に精神疾患を理由に退職した公立学校の教員は457人となっています。この数値は前回の調査(平成27年度)と比べ126人も増えています。これらの統計は、新型コロナウイルスが流行する前のものになります。今回のコロナによって学校に新たな負荷がかかっています。消毒などに関する対応です。そういったことがさらに学校への負担を増しています。

 改めて学校の役割について考えると、増え続けた学校の役割が今後は集約されてくることと思われます。今回、話題にした万引きの対応なども本来は親などが対応すべきことです。それは学校の業務ではありません。そういった役割の整理を進めていく必要がありますし、そうしていかないと学校が持続可能なものとして存在することができなくなってしまいます。先日、小学校での35人学級の実施が決定されました。そういったこととも関連しながら、教師の業務についての改善がなされていくことと思います。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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