学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第243回のテーマは「図工などで使う材料を早めに伝えてほしい」。
特別な持ち物は早めに伝える
図工の道具などの「特別なものの準備」は、親にとって大変な場合があります。普段の生活が余裕なくギリギリの家庭もあります。そういった家庭にとっては、特別なものの準備がさらに生活をバタバタとしたものにしてしまいます。道具の準備において、子供と親の関係、親と教員の関係を悪いものにしてしまう可能性もあります。
こういったものの具体例としてよく挙げられるものが「新聞紙」です。学校では色々な場面で新聞紙を使います。図工や書写でも使いますし、それ以外でも新聞紙を使う機会はあります。そのため、「新聞紙」を持ち物として指示することがあります。以前であれば、新聞を取っている家庭も多かったです。新聞通信調査会の2023年の調査では、新聞を定期購読している人の割合は約58%です。2008年の調査では、約89%となっています。15年間で約30%減少していることとなります。年齢の高い家庭では定期購読している割合が高いのですが、年齢が若くなるとその割合は低くなっています。こういった状況において、急に「新聞を使うので持って来て」という指示をすることは、少し無理があることでしょう。
新聞紙以外でも「トイレットペーパーの芯」や「牛乳パック」などがこういった特別な持ち物に当たるでしょう。こういった特別な持ち物については「早めに伝えていく」ということが大事になります。新聞紙であっても早めに伝えることができれば、親としてはそれなりの対応(コンビニで購入する、新聞を定期購読している知り合いから譲ってもらうなど)をすることができます。そういった配慮をしていくことが大切でしょう。新聞の例にあるように、社会状況や家庭状況が変わってきているということを教員は意識していくことが大切でしょう。
また、連絡の方法についても工夫をしていくと良いでしょう。通常、道具の準備などは「連絡帳」を用いて行われます。そういったものだけでなく、ネットを利用していくやり方も良いでしょう。近年、さまざまな連絡ツールを学校で活用しています。そういったものを上手に活用することで、道具の準備でのトラブルを減らすことにつながるでしょう。
学校で一括購入する方法も
また「共同購入」ということを考えていくことも良いのだと思います。例で出した新聞紙に関しては、用意が難しい家庭が増えているという現状を踏まえ「学校で一括で購入をする」というやり方も良いのだと思います。これまでは家庭で用意していたものでも、それを揃えることが難しい状況では、学校が教材会社などを通して購入していくというやり方です。新聞紙の場合、古新聞はかなり安価で販売されています。年間で使う可能性のある量を学年などでまとめて年度当初に購入をしてしまうというやり方です。そういったやり方であれば、きっと1人あたりの金額は数十円で済むはずです。新聞紙の用意に関して、教員も親もバタバタとすることを思えば、年間で数十円の負担は大きなものではないと思います。そういったことも考えていくと良いでしょう。
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