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【相談対応Q&A】子供同士のケンカに親が出てきてこじれてしまったので仲裁してほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第108回のテーマは「子供同士のケンカに親が出てきてこじれてしまったので仲裁してほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第108回のテーマは「子供同士のケンカに親が出てきてこじれてしまったので仲裁してほしい」。

学校が関与する範囲はどこまで?

 今回のテーマは、学校が関与する範囲はどこまでなのかということです。家庭や地域と学校との関わりにおいて、学校が関与する範囲は広がる傾向にあります。実際、地域で子供が何かのトラブルを起こした際、学校へ連絡が入ることが多いです。お店での万引き、公園での騒音、自転車の乗り方等です。学校(教員)は、親や地域等から悪く思われたくないと思っていることが多いです。良い関係を保つことが日々の学校教育活動をスムーズに行うことにつながるからです。特に管理職はそういった傾向が強いです。少し厳しい言い方をすると「事なかれ主義」のような感じです。そういったこともあり、本来学校(教員)が対応すべきことでないと思われることであっても対応してしまう傾向があります。

 文科省は教員の働き方改革と関連し「学校がすべきこと」「それ以外の組織等がすべきこと」等を整理して示してします。たとえば、小学校の登下校の安全管理等については、保護者や地域住民、警察、行政等が行うべきものだとされています。また、学校徴収金の徴収、管理も基本的には学校以外が担うべき業務とされています。

 近年、学校が民間企業の「顧客意識」や「数値目標」等を取り入れることが多いです。そのこと自体は学校にとって良いことだと思います。ただ、それが形だけのものや偏った形での導入等の場合、学校がさらに疲弊していく原因の1つとなることがあります。「顧客意識」に関しては、「子供」や「親」を必要以上にお客様扱いしてしまうことで、クレーム等が際限なく発生するような場合もあります。「数値目標」に関しては、評価において大事なことではあるのですが、教育においては数値だけの評価にはそぐわない場合もあります。「数値」だけにこだわることで違った方向へ進んでいってしまうことがあることに注意が必要でしょう。

 今回のテーマである「子供同士のケンカに親が出てきてこじれてしまったので仲裁してほしい」というものの場合、元々は親同士で問題を解決しようとしているというニュアンスが伝わってきます。厳密には学校(教員)が関わるようなことではないのだけれども「収拾がつかないので学校(教員)が関わってほしい」または「面倒だから学校(教員)にやってほしい」という感じです。こういった場合、トラブルの状況にもよるのですが、何でもかんでも学校が引き受けるべきではないと私は思っています。

 先ほども書いたように学校はさまざまな経緯から面倒なことを引き受けてしまう傾向があります。そういった「何でも屋」のような感じでこの数十年が経っています。あるケースで学校が親切心等から何かのトラブル(本来学校の担当ではない)を対応したとします。そういった話は保護者の間ではすぐに伝わります。次に似たようなケースが発生した場合も学校で対応しなければならなくなります。もし対応をしなければ「なぜ、〇〇さんの場合は対応したのに、今回はしないのですか?」と苦情が来てしまいます。そういったことから学校が対応しなければならない範囲がどんどん広がっていってしまっています。

学校が関与する範囲を線引きする

 学校という組織として、どこまでが学校で、どこからが保護者なのかということをきちんと議論し、線引きをしていくことが大切です。文科省の示したものを参考にしていくと良いでしょう。ただそれぞれの学校の置かれた状況は違う部分もあります。そういった点を配慮しながら学校でのあり方を考えていくと良いでしょう。学校内で共通認識を持ち、保護者や地域と関わっていくことが今後の学校運営においては必要なのでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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