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全国14自治体が視察…大分県がNeatで解決した、双方向な遠隔授業の「音」と「操作性」の課題

 2025年12月に開催された大分県教育庁遠隔教育配信センターの視察会には、全国14自治体から33名が参加した。ノルウェーのビデオ会議デバイスブランドNeatの遠隔教育ソリューションを採用し、遠隔授業の課題だった「音質」と「操作性」を解決した同センター。双方向授業の実際と参加者の声をレポートする。

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全国14自治体が視察…大分県がNeatで解決した、双方向な遠隔授業の「音」と「操作性」の課題
  • 全国14自治体が視察…大分県がNeatで解決した、双方向な遠隔授業の「音」と「操作性」の課題
  • モニター上に設置された、カメラ・マイク・スピーカー一体型の「Neat Bar Pro」
  • 配信スタジオと学校をつないで行われる「双方向の授業」
  • 遠隔教育配信センター所長 佐藤哲也氏
  • 信州大学教育学部名誉教授 東原義訓氏
  • 大分県教育庁遠隔教育配信センター次長 釘宮隆之氏
  • Neat製品展示ブースのようす
  • グループディスカッションのようす

 少子化の影響で高校生の数が大きく減少し、多くの地域で学校の統廃合や規模の縮小が進んでいる。同時に専門科目や選択科目の開設が難しくなり、教育機会の格差、学習ニーズへの対応にも課題が生じている。

 こうした状況から文部科学省は高校教育改革を推進するため各都道府県に「高等学校教育改革促進基金」を創設し、先導校の取組みや成果を域内の高校に広める「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」に約2,955億円の補正予算(2025年度(令和7年度)第1号補正予算))を計上。国会は2025年12月16日に、これらを含む2025年度補正予算を可決・成立した。

 「高等学校教育改革促進基金」の支援対象は、(1)地域社会や産業を支える専門人材(アドバンスト・エッセンシャルワーカー等)の育成、(2)理数系人材の育成、(3)遠隔教育などを含む多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保の3本柱とされており、全国の自治体からの関心が高まっている。

 こうした社会課題を背景に、大分県は2025年4月、全国に先駆けて高度な配信設備を備えた「大分県教育庁遠隔教育配信センター(OitaTEC)」を開設した。これまで文部科学省のDX加速化推進事業(DXハイスクール)などの国費を活用して環境整備を進めた大分県には現在、“遠隔教育の先進地”として全国から視察が殺到している

遠隔教育の先進地ならではの視察会は活況

 2025年12月16日~17日に「大分県教育庁遠隔教育配信センター」で開催された視察会および意見交換会には、全国14自治体から33名の教育関係者が集まった。大分県では現在、おもに大学進学を支援する配信センター方式と、商業・福祉・情報などの多様な専門科目を実施する学校間連携方式の2種類の遠隔教育が実施されている。配信センター方式は2027年4月までに地域にある普通科設置校17校(大分市以外の普通科設置校)への導入が決定している。

 また遠隔授業と遠隔による学習支援を組み合わせた「大分モデル」では、生徒進学支援オプション(SOP)とよばれる遠隔学習支援を大分県内すべての普通科設置校等28校で展開。長期休業中の特別授業や入試問題の動画配信、また一部の学校では個別指導、課題配信、進学・キャリアガイダンス、個別教科面談など幅広いサポートが行われている。

 視察会の1日目にはまず、配信センターから実際の配信側の遠隔授業のようすが公開された。大分県の配信センター方式の遠隔授業はすべて2~3校合同で実施される。配信センターには防音・吸音が整った8つの専用配信スタジオが整備され、配信する先生と生徒は対面と変わらない感覚で授業ができる

 基幹システムにはNeat遠隔教育ソリューションとZoom Rooms、MetaMoJiを採用。配信スタジオには2校の生徒のようすを映すモニター、カメラ・マイク・スピーカー一体型の「Neat Bar Pro」、配信状況や生徒ひとりひとりのタブレット端末(iPad)で使用されているMetaMoJiの画面を確認できるモニターも設置されている。

モニター上に設置された、カメラ・マイク・スピーカー一体型の「Neat Bar Pro」

 数学の授業では、生徒がiPadでMetaMoJi Classroomを利用して数学の問題に取り組み、問いに対する考えを表現していた。先生は共有された生徒の画面をもとにコミュニケーションを図る。一方的な集団授業の配信ではなく、先生と生徒、学校間の生徒同士といった双方向の遠隔授業が実現していた。遠隔授業では生徒のようすを把握することが難しいという課題も指摘されるが、大分県では現在、机間指導用ロボット「temi」を研究中だ。受信側の教室に置かれたロボットによって先生は生徒の手元の状況を観察し、生徒に話しかけることもできる。

 遠隔教育配信センター所長の佐藤哲也氏が「遠隔教育はこれまでの代替ではなく、新たな教育にひとつ踏み込むものになる」と話したように、新たな学びの形がすぐそこにあることを印象づけた。

遠隔教育配信センター所長 佐藤哲也氏

 英語の授業で特に印象的だったのは、画面越しとは思えないほどの「臨場感」だ。配信スタジオの先生は、受信側教室の四隅に置かれたデバイスを使い、あたかもグループワークに取り組む生徒たちの輪の中にいるかのように参加していた。

 広い教室、かつ多人数がいる空間でありながら、Neat製品を通して聞こえる声は非常にクリアだ。同時に話してもお互いの声が消えない「ダブルトーク」機能が、わずかなつぶやきや笑い声まで鮮明に拾い上げ、スピーカー越しの音声であることを忘れさせる。参加者からは「魔法にかかったような音質」という声も聞こえた。音声の壁が取り払われたことで、生徒たちは機器の存在を意識することなく、主体的に議論や発表を行っており、距離を感じさせない自然な双方向の授業が実現していた。

配信スタジオと学校をつないで行われる「双方向の授業」

 ほかの配信室では、実際の授業体験や教員への質疑応答が行われた。「遠隔教育は画面と声しかないが、むしろ集中できる良さがある」「生徒がどういう反応をするのかを想像しながら教材を作成している」「先生が近くにいないからこそ生徒の主体的な学びが促される」といった現場の声に、参加者は熱心にメモを取っていた。

 2日目には、配信センターの外部人材である信州大学教育学部名誉教授の東原義訓氏の講演が行われ、これまでの遠隔教育の歴史や意義、対話的な学びや探究への期待が語られた。

 東原氏は「遠隔教育の制度はある程度整えられ、環境整備のあり方も明確になってきたので、今後の課題は、遠隔授業そのものの質の向上です」と焦点を明確にした。その工夫のひとつとして、東原氏が新潟県教育委員会と作成した「遠隔授業担当教員用ルーブリック」も紹介。さらに、今後、都道府県が直ちに取り組むべきこととして、国が定める高等教育改革のグランドデザインに基づき、実行計画を策定すること、そのパイロットケースとしての改革先導拠点の創設が求められることを示した。

信州大学教育学部名誉教授 東原義訓氏

遠隔教育に必須の“音質と操作性”

 2日間にわたる視察会では、遠隔授業の実際や課題、今後の展望が共有された。視察会の合間に、大分県教育庁遠隔教育配信センター次長の釘宮隆之氏に、配信センター設立の背景やNeat製品を選んだ理由について詳しく聞いた。

 「われわれがこの配信センターをゼロから作り上げるとき、北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)から多くの支援をいただきました。また東原教授をはじめとした外部委員にも多大な協力をいただきました。今後はそれらをほかの自治体に還元したいという思いがあります」と釘宮氏は話す。

 地域の教育や現在の遠隔教育に課題を抱える自治体は多い。「配信センターを開設した2025年4月から200名を超える方々に配信センターや受信校の視察をしていただき、遠隔授業を体験していただいています。実際に機器を体験してもらうのがいちばん良いですね」(釘宮氏)

大分県教育庁遠隔教育配信センター次長 釘宮隆之氏

 大分県教育庁遠隔教育配信センターでは、Neat製品が遠隔教育用ビデオ会議システムとして一括で導入されている。現場では「Neat Bar Pro」には遅延がなく、映像と音声がクリアだという声が多いという。

 「Neat製品が優れているのは遅延のなさと音です。教室のいちばん前に機器を置いても、いちばん後ろに座る生徒のため息や、『あー、わからない』といった実際に教室にいても聞こえないようなささやき声まで聞こえます。これが遠隔授業の課題とされていた個別対応の支援に役立ちます」(釘宮氏)

 またNeat製品ではシンプルな操作で遠隔授業を開始でき、先生は教えることだけに集中できる。「配信側も受信側も、マニュアルを見なくても直感的に使えます。もともと学校間連携方式の遠隔授業でNeat製品を先に導入しましたが、2つのボタンを押すだけで配信校と受信校がつながり、ピントや音も自動で調整してくれます。Neat製品ならばどんな年代の先生でも絶対に使えますので、ICT活用能力の格差は存在しません」と釘宮氏は運用面のメリットを伝えた。

 現在、配信センターからリモートで、各学校に設置されている100台以上のNeat製機器のメンテナンスや状態監視が可能となっている。多くの高校に展開したときに、どのように機器を維持・管理できるかは運用時においてきわめて重要なポイントのため、視察参加者の関心も高かった。

Neat製品展示ブース

視察で見えた「課題解決」の糸口

 視察参加者によるグループディスカッションでは、遠隔教育をすでに実施している自治体、遠隔教育をどのように導入すべきかに不安がある自治体など、自治体それぞれのフェーズによる悩みや課題が共有された。

 遠隔教育の導入を検討するフェーズの場合、そもそも遠隔教育をどう位置付けるかといった自治体のビジョンの必要性や教育委員会の管理職クラスの役割が大事だという声も聞かれた。また「情報」などの専門科目の教員の手配や遠隔教育を専門とする教員の確保などの人員配置の難しさ、配信教員の負担軽減、遠隔授業の質や評価をどう担保するかなど、実施している遠隔教育にも課題が山積している。

 特に授業の質を高めるための機材を揃えたいが予算の問題があるという声も多く、高等学校教育改革促進基金への期待も感じられた

視察参加者によるグループディスカッション

 参加者からは、「県や地域ごとに遠隔授業の目的が違う場合もあるが、自分の自治体にあてはめて考えられるので参考になった」「設備には予算の問題があるが、遠隔授業の質を担保するためにも高等学校教育改革促進基金を検討したい」「授業プランは現場任せでなく教育委員会の担当が伴走する必要があると感じた」「どのように授業を計画して運営するのかヒントが得られた」といった課題解決に向けた手応えを感じる声が聞かれた。

 Neat製品には「遠隔授業でもっともストレスになるのが音声なので、音質が非常にクリアなのは大きい」「授業の臨場感に驚いた」と映像・音声の品質の高さに対する評価が多く、「とにかく操作が手軽」「パソコン・タブレットを切り替える装置やカメラなどの機器があると、ひとつひとつを操作しなければならない場合がある。Neatならば授業を配信する先生の負担が少ないと感じた」「ひとつのパッケージで提供されているのは、授業をやるうえでスムーズだと思った」といったシンプルな操作性に対しての評価も高かった。さらに「今後は、生徒同士が協働的に対話することがますます重要になるが、今回の取組みは学校間の遠隔授業でもそれが十分に可能だと感じさせるものだった」といった声もあった。

基金の活用から双方向の遠隔教育の実現へ

 遠隔教育の環境を整備するうえでもっとも大切なポイントは何か。「文部科学省は遠隔教育を推進できるように予算を工夫して自治体が使えるような仕組みを作ってくれています。だからそれをうまく活用できていますか、とまずは問いたいです」と釘宮氏はまず国のさまざまな支援に対する自治体側の対応を第一にあげた。

 「また人口が減少して子供の数が少なくなるのはどこも共通の課題で、教育サービスをどんなところでも維持・向上する方法のひとつとして、この遠隔教育は有効だと考えています」と釘宮氏は続ける。

 文部科学省が遠隔授業の要件としてあげているのは、一斉配信ではなく双方向で生徒と先生がやり取りするものだ。そのやり取りでは少しの遅延でも授業展開は困難になり、また音声が悪ければ生徒の理解度や集中も切れてしまう。そうした従来の遠隔教育のハードルを解決できるソリューションが、今は存在する。

 教育にはさまざまな課題があるが、遠隔教育にはその一部の課題解決とともに将来の大きな可能性がある。大分県の遠隔教育の取組みからは、優れた人材を育成するという強い意志が感じられた。こうした視察を通じて、全国の教育関係者のコミュニティが形成され、より良いソリューションが広まることも期待できる。

 Neatframeは、遠隔授業・遠隔連携に必要な教室環境や運用設計に関する相談を受け付ける「N-E.X.T.ハイスクール遠隔教育インフラ構築支援窓口」を、2026年1月21日に開設した。都道府県・市区町村の教育委員会および高等学校を主な対象に、検討初期の課題整理から、機器導入時の検証、導入後の運用相談まで、遠隔教育インフラ整備に関する相談に対応している。

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《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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