みんなのコードが提供する「プログルラボ みんなで生成AIコース」における利用データをもとに、安藤祐介氏(みんなのコード)、佐藤和紀氏(信州大学)、井手絢絵氏(ペンシルバニア州立大学)による共同研究の成果が、日本教育工学会(JSET)の研究報告集に掲載された。
この研究は、国内最大規模となる生成AIの利用ログをもとに、学校教育における生成AIの利用実態、安全性、そして教育的な効果を横断的に調査したもの。児童生徒1万7,418名による55万件以上の利用ログと教員97名のアンケートから、授業の中で子供が生成AIに入力したプロンプトの傾向に加えて、教員が感じた指導上の手応えや、クラス全体の情報活用能力、学級の雰囲気との関係性を分析している。
まず、利用データの分析から、短期利用と長期利用(28日以上)のクラスを比較したところ、子供たちのプロンプト(入力内容)に質的違いがあることがわかった。短期利用(体験・単発利用)では、「翻訳」「要約」「単語検索」など、生成AIの機能確認や正解を求める利用が中心だった。一方、長期利用(継続的な利用)では、「自分の作文への批評依頼」「意見交換」「感謝の表現」といった、対話的なプロンプトが多く出現した。この結果は、長期的な利用が、生成AIを批判的思考や創造的活動を支える「学びのパートナー」へと進化させることを示している。
また、教師アンケートとのクロス分析の結果、生成AIを単に長く使えば良いわけではなく、児童生徒の「情報活用能力」が高いクラスにおいて、「学びのパートナー」として生成AIの効果的な活用ができているという強い正の相関が見られた。これは、生成AIの操作的なスキルだけを教えるのではなく、探究的な学び全体を通じた「情報活用能力」の育成こそが、生成AIのポテンシャルを引き出すための不可欠な土台であることを示唆している。
一方、55万件のログのうち、コンテンツフィルターが有害と検知したのは0.37%程度であり、その大部分は小学生のひらがなの羅列などの誤記や文脈による誤検知だった。自傷行為など深刻なワードは0.0003%であり、教員による適切な見守りと指導がある環境下であれば、リスクは十分に管理可能であることが定量的に裏付けられた。
これらの結果から、学級における「情報活用能力」の高さと「長期的な継続利用」が組み合わさることで、生成AIが単なる検索や翻訳の「ツール」から、対話を通じて思考を深める「学びのパートナー」へと変容する可能性が示唆されたとしている。
みんなのコードCTO 安藤祐介氏は、「全国のさまざまな学校での取組みにより、生成AIを教室の中で活用する際の典型的な場面がデータから見えてきました。先生が生徒の利用を見守る中で質問や、文章の要約・翻訳といった典型的な利用方法は短期的な利用でも実現できているようです。また長期間活用したクラスの生徒からは、生成AIと人間の新しい関係を予感させるような利用も出てきています。今回の知見が今後生成AIを教室の中で利用する先生方の背中を押すメッセージになれば幸いです」とコメントを寄せている。
今回の研究は、「NHK for School 生成AI研究会」の成果の一部としてまとめられたものである。論文名は「子供のプロンプトと教師アンケートに基づく学校での生成AI利用の実態調査」。著者は、安藤祐介氏(みんなのコード)、佐藤和紀氏(信州大学)、井手絢絵氏(ペンシルバニア州立大学)の3名。論文データは、日本教育工学会(JSET)の研究報告集(2025年2025巻3号 p104-111)に掲載されている。







