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東京科学大学、国際卓越研究大学の認定候補に「ビジョン駆動型」で世界のトップを目指す

 東京科学大学は国際卓越研究大学第2期公募において認定されたことを受け、2025年12月19日に記者会見を行った。

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 東京科学大学(Science Tokyo)は2025年12月19日、文部科学省が進める「国際卓越研究大学」の第2期公募において認定候補に選ばれたことを受け、記者会見を実施した。会見には、大竹尚登理事長、田中雄二郎学長らが出席し、大学の構想と未来への展望を語った。

認定候補選出への決意「北アルプスのような高い山々に挑む」

 会見の冒頭、大竹理事長は、国内外の多くのステークホルダーや学生との対話を重ねて作成した構想が認められたことについて、「正直申しあげてほっとした」と率直な心境を明かした。

 同時に、今後に向けて掲げた目標については「山で例えれば、北アルプスのように高い山が連続してそびえ立っているようなもの」と表現。「いかに挑戦していくかという25年間がこれから始まる。身の引き締まる思いであり、決意に満ちた状態にある」と語り、認定はあくまでスタートラインであることを強調した。

「前例なき挑戦」から生まれた改革のモメンタム

 東京科学大学は、2024年10月に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合して誕生した。大竹理事長はこの統合を「前例なき挑戦」であり、国際卓越研究大学への挑戦の基盤であると強調した。「わずか2年という驚異的な速さで、学生・教職員約1.9万人を擁する巨大組織の統合を完遂した。これは、未来を先送りしたくないという強い意志の表れであり、このプロセスで得られた信頼関係と推進力、すなわち『モメンタム』こそが、我々の抜本的改革の原動力だ」と大竹理事長は語る。

提供:東京科学大学

 統合は単なる組織の合体ではなく、名称や理念、ロゴマークの決定プロセスに社会を巻き込み、国立大学として初となる「理事長(CEO)-学長(CAO)」体制を導入。これにより、法人経営と教学の責任を分離し、迅速かつ戦略的な意思決定を可能にしたという。

 大竹理事長は、このガバナンス改革が「統合後の動的プロセス」を生み出し、大学の経営方針をまとめていると説明する。「苦労は多い。けれど前に進んでいる実感がある」という言葉からは、困難な改革を乗り越えてきた自負がうかがえる。この統合の成功体験が、大学全体に「我々ならできる」という自信を醸成し、次なる大きな変革、すなわち「ビジョン駆動型の大学」への転換を後押ししているのではないだろうか。

社会を駆動する「ビジョナリー・イニシアチブ」

 東京科学大学は「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」をミッションに掲げている。今回の卓越研究大学の公募にあたっては、このミッションを踏まえ、すでに取り組んでいる教育・研究をはじめ大学経営の大胆な改革を一段と加速させることを目指している。

 同大学は、社会と共有する「良き未来」を起点に研究・教育を設計する「Visionary Initiatives(VI)」を構想の中核に据えている。これは、従来の学問分野別の縦割り構造を打破する試みだ。「善き生活」「善き社会」「善き地球」の3軸のもと、トータルヘルスデザインやGX(グリーントランスフォーメーション)など6つのVIが稼働中であり、将来的には全教員の所属を目指して異分野融合を加速させていく。

提供:東京科学大学

教育改革・研究体制強化・財源確保を柱にした新構想

 教育面では、大学院において専門性を深める「トラック」と、VIを軸とした「VIコース」を柔軟に組みあわせる体制を構築する。SC制度の導入により、異分野の複数教員がチームで学生を指導し、多角的な視点を養う。医工横断キャリアでは、理工学系学生が医学を学び研究医を目指すなど、垣根を越えた履修制度を拡充し、真の「医工連携」人材を育成していくとしている。

提供:東京科学大学

 また、大学病院を、新たな医療を創出する拠点へと転換するため、その中核となる「国際医工共創研究院」では、理工系と医歯学系の研究者計120名規模が臨床現場で協働。これを支えるため、英国を参考に臨床系教員の活動時間を明確に分ける「PA制度」を導入する。臨床業務と研究・教育エフォートを計画的に配分することで、医師の研究時間を組織的に保証し、臨床発のイノベーションを途切れることなく成果へつなげていく。

 持続可能な大学経営のため、田町キャンパス等の土地活用により長期的な安定収入を確保する。スタートアップ支援のためのインキュベーション施設の整備により、25年後には100社のスタートアップ創出を目指すという。さらに、寄付獲得を担う「エンダーメントオフィス」や「ビジョンファウンデーション」を設置し 、25年後には1兆円規模の基金構築を目標に、自らの戦略で財源を確保するガバナンスを確立する。女性研究者比率40%、外国人研究者比率30%という高いダイバーシティ目標も示された。

 25年後の姿について、大竹理事長は「特定のランキングに入るというより、ビジョンに立脚したユニークな大学でありたい。地球温暖化などの課題に対し、大学のネットワークをオーケストレート(駆動)する役割を担いたい」と展望を述べた。新生「Science Tokyo」が、科学の力でどのような「善き未来」を描き出すのか、その挑戦に大きな注目が集まる。

《外岡紘代》

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