文部科学省のあべ俊子大臣は2025年10月17日の定例記者会見で、15日に開かれた中央教育審議会「教師を取り巻く環境整備特別部会」で議論された緊急声明案について言及した。声明案では、中学校35人学級の実現に向けた義務標準法改正の推進や、スクールカウンセラー・ソーシャルワーカー等の支援スタッフの充実を求めており、あべ大臣は必要な予算の確保に向けて全力を尽くす姿勢を示した。
文部科学省は、2026年度からの中学校35人学級実施に向けた概算要求を行っており、教員業務支援スタッフやカウンセラーの配置拡充経費も盛り込んでいる。会見では、特別部会での議論を踏まえ、現場で実効的な改革を進めるための体制整備を速やかに進めることを強調した。また、緊急声明案は改革の流れを加速させるための提言として受け止めていると述べ、次期政権や国会への要望とは切り離して対応する姿勢を示した。
教育政策全般については、自民党と日本維新の会の政策協議の中で議題となっている「高校無償化」や「給食無償化」に関して、3党合意に基づく実務者協議を進め、状況を踏まえて直ちに必要な対応ができるよう準備していると述べた。加えて、日本維新の会の政策協議メモの中で2025年度中の策定を目指すとしている「高校教育改革のグランドデザイン」については、日本維新の会の政策協議を抜きにしても今後の高校のあり方を見据えた検討は不可欠とし、文部科学省として積極的に議論を進める考えを示した。
一方、高等教育改革に関しては、学部と大学院を連続して5年間で修了できる「学士・修士5年一貫制度」の導入に関する議論が進められていることに言及。より高度な教育を受けた修士修了者の増加を図ることが課題としたうえで、学部・大学院の教育課程を一体的に設計することで、研究力と専門性の高い人材育成を促すねらいを説明した。大学院進学への経済的な不安や、卒業後のキャリアパスに対する不安についても、学生が不安なく大学院進学を選択できるよう、奨学支援や若手研究者支援を一層強化するとしている。
会見ではこのほか、10月21日に打ち上げが予定される新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機に関する質問もあがった。あべ大臣は「着実なミッション遂行を期待している」と述べ、今後も宇宙戦略基金を活用した物資輸送技術の向上に努めるとした。