教育業界ニュース

【先生の事情とホンネ】大阪・関西万博への遠足のリアル

 教育現場で日々奮闘されている先生へ。リシードは、現役の小学校教諭である松下隼司氏による連載「先生の事情とホンネ」を毎月掲載している。第5回のテーマは「大阪・関西万博への遠足のリアル」。

教育行政 その他
迷子防止のための工夫
  • 迷子防止のための工夫
  • 迷子防止のための工夫
  • 先生を見つけやすいように購入した、ミャクミャクカラーの服
  • 事後学習で児童が描いた絵(※保護者の了承を得て掲載しています)
  • 事後学習で児童が描いた絵(※保護者の了承を得て掲載しています)

 教育現場で日々奮闘されている先生へ。リシードは、現役の小学校教諭である松下隼司氏による連載「先生の事情とホンネ」を毎月掲載している。

 文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞した経験をもち、教育書の執筆も手掛ける松下教諭が、日々どのようなことを考えて子供たちと向き合っているのか。授業や教室運営の工夫を紹介するほか、未来を担う子供たちの教育に携わる「教員」という仕事の魅力も発信していく。

 第5回のテーマは「大阪・関西万博への遠足のリアル」。遠足で万博に行った松下教諭の、引率の工夫や感想を紹介する。

大阪・関西万博への遠足のリアル

 大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)が2025年4月13日から10月13日まで、大阪市の人工島・夢洲で「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催されています。

 5月に勤務校の遠足で、大阪・関西万博に子供たちを引率しました。

 大阪・関西万博が開催されるまでは、テレビやSNSなどで、大阪・関西万博に関してのマイナス的な情報がとても多く、正直、不安がありました。4月の春休み期間中に、下見で行った際も、入場ゲート前で90分ほど待ちました。その日、とても日差しが強くて、「子供たちの熱中症やトイレが心配だな」と心配しました。

 でも、遠足当日、子供たちと大阪・関西万博に行くと、不安が一掃されるほど、子供たちの笑顔を見ることができ、とても楽しい思い出に残る遠足になりました。

 下は、大阪・関西万博の遠足の次の日に学校で書いた、子供たちの作文です。
(※作文や写真は、保護者の了承を得て掲載しています。)

「のどがかわいた…」

 私は、まず大屋根リングにエスカレーターで上がって、しばふのところに上って、みんなで、大屋根リングの下にいる人たちにむかって
「ハロー」
と言って手をふりました。
 そして、おべん当タイムになりました。おべん当はサンドイッチが2つありました。
 おやつは、200円だったので、残り1円になるまで使いました。おかしは3つでした。
 そして、関西パビリオンに入りました。鳥取は、鳥取の砂とパレードがありました。楽しかったです。
 のどがかわきすぎて死にそうでした。ハンサムじゅんじ先生が助けてくれました。


「水の大切さ」

 今日、五年生の友だちに、
「万博は暑いから、水を残しておいた方がいいよ。」
と言われました。
 そして、学校に着くとさっそく水を一口飲みました。でも、ぼくは後かいしました。
 出発すると、電車に乗りました。電車に乗るとすぐにのどがかわきました。そして、水を一口飲みました。それで何分かたつと、またのどがかわいたので、また水を飲みました。
 万博に着くと、大屋根リングをまわりました。そのせいで、またのどがかわいたので、水を一口飲みました。おそらくこの時、水は水とうの三分の二ほどだったと思います。そこで、そばにいた友だちに、
「万博は暑いから、水は残しておいた方がいいよ。」
と言いました。でも、友だちは水をたくさん飲んでいました。ぼくは、できるだけ水を節約しました。たくさん歩いても、飲むのは三てきほどでした。
 そして、ついにおべん当の時間がやってきました。そこでは、水が少ないことをわすれてたくさん飲んでしまいました。おそらくこの時、水は水とうの三分の一ほどだったと思います。それで次に都道府県の体験シアター(関西パビリオン)に行きました。そこは楽しかったのですが、またのどがかわいてしまいました。だから、また水を一口、飲みました。
 その後、ミストがあったので、そこでも体をうるおしました。
 その後に、少し水を飲みました。おそらくこの時、水は水とうの四分の一ほどだったと思います。
 そして、帰る時に、先生が水を持ってきて、水とうに入れてくれました。そして、学校に帰ると一気に水を飲みました。とてもたくさん水が入ってあって、のどがとてもうるおいました。
 そんなことがあってぼくは水の大切さを知りました。


「ミストでびしょぬれ」

 ぼくは、遠足に行くのをとても楽しみにしていました。
 そして次の日に学校に行きました。とてもわくわくしました。
 電車が長くてとてもつかれました。
 さらに関西パビリオンに行くのにも歩いたので、とてもつかれました。
 でも、関西パビリオンは、とても楽しかったです。鳥取県は、虫めがねでお宝を探すことが楽しかったです。しかも、それが終わったら、とても砂がきれいになりました。いろいろなことができて楽しかったです。
 団体休けい所に行って、おべん当を食べました。とてもおいしかったです。おやつは、ほとんど食べれました。ココアシガレットがおいしかったです。
 次い、水上ショーを見ました。とてもきれいでした。みんな、水とうの水がなくなってきて、ぼくも水がなくなってきました。
 その後、ミストに行って、水に少しぬれました。服がびしょぬれになってしまいました。みんなに、
「顔がこおってる。」
と言われたけど、自分ではどんな顔か分かりませんでした。
 くらげ館は、くらげの触手みたいなのを触ると、気持ち良かったです。
 また家族で行きたいです。


 大阪・関西万博への遠足の実情と工夫を紹介いたします。これから、遠足や修学旅行など校外学習で大阪・関西万博に行かれる方のお役に少しでも立てればと思います。

<1>迷子対策
 大阪・関西万博への遠足でいちばん心配だったのが、“迷子”です。

 大阪・関西万博は、毎日、とても多くの来場者があります。遠足で行く学校も、自分の勤務校だけではないです。同じ日に、たくさんの小学校が来場します。同じような服装だと、自分の学校の友達とはぐれてしまうかもしれません。間違って、他の学校に付いて行ってしまうかもしれません。広い会場で、迷子になってしまったら、見つけるのが大変です。

 そこで、迷子防止の工夫を帽子にしました。

 赤白帽子を赤にして、青の布テープを防止の後頭部あたりに貼りました。

 赤色に青色でミャクミャクカラーです。遠足前日に教室で貼りました。子供たちは、すぐにミャクミャクカラーだと気付いて、大興奮でした。青色の布テープにミャクミャクの目を描く子供が何人もいました。家に持って帰って描き足して来る子供もいました。遠足後、1~2週間、青色の布テープを外さないで大切に貼ったままにする子供もいました。

 標準帽子や赤白帽子を被っている学校の子供たちは、会場内にたくさんいましたが、ミャクミャクカラーの帽子を被っている学校の子供たちは見ませんでした。子供たちは、目の前を歩くミャクミャクカラーの帽子を被った友達に付いて歩けばいいので、迷子になる子供は出ませんでした。

 私も自分の帽子に、子供たちと同じように青色の布テープを貼りました。

 大阪・関西万博の会場内には、帽子を被って歩く大人はたくさんいますが、青色のライン(布テープ)がある帽子は珍しいですし、目を引きます。子供たち目線で、担任がどこにいるかわかりやすかったかと思います。布テープを貼る工夫は、時間とお金がそれほどかからないのも良いところだと思います。

 また、引率者として帽子以外の服装の工夫もしました。子供たちが自分の担任の先生がどこにいるかすぐに見つけやすいように、ミャクミャクカラーの服を探して購入しました。

 このポロシャツを遠足当日に着ていきました。子供たちは、とても喜んでくれました。遠足の楽しい雰囲気づくりにも効果がありました。

<2>水分補給
 遠足当日、とても暑くて、水筒のお茶を全部飲んでしまってなくなってしまう子供が何人もいました。

 そこで、私が買って持っていた未開封のペットボトルの水をあげました。それでも足りなかったので、校長先生が、2リットルのペットボトルの水を3本購入してくださりました。

 それを子供たちの水筒につぎ足しました。

 大阪・関西万博内は、ウォーターサーバーがいくつか設置されているのですが、水筒やペットボトルを持って並んでいる人がたくさんいて、長蛇の列でした。その長蛇の列に並んで待つ時間はありません。

 だから事前に、次のような工夫をとる必要があります。

1)子供たちに、「普段よりも大きめの水筒を持ってくる」ように言っておく。
2)飲むペースを言っておく。たとえば、「お弁当タイムまで・お弁当タイム・お弁当タイム後から帰るまでで、3分の1ずつ飲む」と目安を伝えておく。
3)教員が事前にお茶や水のペットボトルを余分に購入して持って行っておく。
4)当日、会場内にあるコンビニや自販機で購入する(ただし、会場内はキャッシュレスなので、現金は使えない)。
5)教員が、塩分チャージなどタブレットタイプの熱中症・脱水症状対策の物を購入して持って行っておく。

<3>おすすめスポット
 遠足などの校外学習として、大阪・関西万博に行く場合は、入場時刻や退場時刻・入れるパビリオンなどが決められていることがあります。

 私の勤務校も、入れるパビリオンは関西パビリオンと決められていて、ほかのパビリオンには入ることができませんでした。関西パビリオンは子供たちに大好評でしたが、せっかく大阪・関西万博に来たのだから、ほかにももっと楽しい経験をさせてあげたいというのは教師心です。そこで、大阪・関西万博にとても詳しい同僚の先生が、事前予約なしで、無料で体験できる、

・「いのちパーク」にあるミスト
・「ウォータープラザ」にある水上ショー
・「いのちの遊び場」にあるクラゲ館

に子供たちを連れて行ってくれました。びっくりするぐらい楽しかったですので、よろしければ、行ってみてください。

 「いのちパーク」にあるミストは、大屋根リングのちょうど中心あたりにあります。14本の柱で円状に囲まれているところの中に立っていると、大量のミスト(霧)が噴射されます。

 ミストは約3分間噴き上がります。ミストの噴射口は、地面にあるのですが、噴射口に顔を近づけて、顔や服がミストでびっしょりになるほど喜ぶ子供が何人もいました…。

 このミストは、15分に1度、噴射されます。体と心を潤すおすすめスポットです。

 「ウォータープラザ」にある水上ショーは、大阪・関西万博の南側(海側)にあります。

 水上ショーは、夜の部は予約が必要ですが、昼間は予約なし・無料で観ることができます。毎日11:00~16:00の毎時0分から約5分間実施されています。開始時刻の10分ほど前に着いて、席を確保しておくことをおすすめします。

 (以前、「ウオータープラザ」の海水から指針値を超えるレジオネラ属菌が検出された問題で、水上ショーが中止されていましたが、博覧会協会が「培養法」という方法で人体に健康被害を与える種類のレジオネラ属菌について調べたところ「菌は検出されなかった」と安全が確認されました。現在、水上ショーの再開の準備が進められています。) 

 「いのちの遊び場」にあるクラゲ館は、シグネチャーゾーンにあります。クラゲの「揺らぎ」をテーマに、生命の不思議や創造性を体感できるユニークな空間です。音楽家で数学者でもある中島さち子さんがプロデュースし、建築家の小堀哲夫さんのデザインです。クラゲのふわふわ・ゆらゆらとした動きをイメージした建物で、見るだけでもわくわくする空間になっています。

 ミストと水上ショーは、事前にどんなところか、何が始まるのかを子供たちにあえて説明しないで、サプライズ的に体験してもらうのも楽しいです。

「ちょっとここで休憩するよ~。」

と言って、座らせておくのです。そして、開始時刻になったらミストが噴射されたり、水上ショーが始まったりして、子供たちがとても驚き喜んでくれます。

<4>楽しい事後学習
 大阪・関西万博への遠足から戻って、後日、図工の時間に、ミャクミャクを子供たちに描いてもらいました。八つ切り画用紙に、鉛筆で下描きをしてから、クレパスでなぞりました。そして、水彩絵の具で着色しました。画用紙は縦でも、横でもどちら向きでもいいことにしました。子供たちひとりひとり、思い思いのミャクミャクを楽しく描くことができました。

 教室や廊下に掲示すると、子供たちの描いた可愛らしいミャクミャクが並び、楽しい雰囲気になりました。

 というわけで今回は、大阪・関西万博での「迷子対策」「水分補給」「おすすめスポット」「楽しい事後学習」について紹介させていただきました。子供たちが安心・安全に楽しく大阪・関西万博で活動し、学習することに生かしていただければ幸いです。

《松下隼司》

松下隼司

大阪市公立小学校教諭。令和4年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。教科書編集委員。絵本「せんせいって」「ぼく、わたしのトリセツ」、教育書「教師のしくじり大全」「むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営」などを執筆。小劇場を中心に10年間、演劇活動を行う。Voicyパーソナリティー。

+ 続きを読む

この記事はいかがでしたか?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top