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子供アドボカシー事業、実施している自治体は77%

 NPO法人全国子どもアドボカシー協議会は、大分大学権利擁護教育研究センターの協力のもと、全国79自治体を対象に「子供の意見表明等支援(子供アドボカシー)事業」のアンケート調査を実施した。約8割の自治体が事業に取り組んでいる一方、支援員の確保や予算不足、関係機関との調整など、事業運営における課題が依然として解決されていないことも浮き彫りになった。

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2024年度「子どもの意見表明等支援事業に関するアンケート」調査結果報告
  • 2024年度「子どもの意見表明等支援事業に関するアンケート」調査結果報告
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  • 意見表明等支援員の研修体制
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 NPO法人全国子どもアドボカシー協議会は、大分大学権利擁護教育研究センターの協力のもと、全国79自治体を対象に「子供の意見表明等支援(子供アドボカシー)事業」のアンケート調査を実施した。約8割の自治体が事業に取り組んでいる一方、支援員の確保や予算不足、関係機関との調整など、事業運営における課題が依然として解決されていないことも浮き彫りになった。

 この調査は、子供の意見表明等支援事業の実施状況を把握し、アドボケイト委嘱・委託団体の課題を把握することを目的としている。全国子どもアドボカシー協議会は、子供・若者参画を中心とした「子供アドボカシー(意見表明等支援)」を全国へ広げるための活動を行っている。

 2024年度は、2023年度に続き、子供アドボカシー事業の取組みが進んでいない地域においても、社会的養護を受けている子供も等しく意見表明権を行使できる基盤をつくることを目的として、子供アドボケイト(意見表明等支援員)を養成する講座や、子供アドボカシー事業の導入を支援する「子供アドボカシースタートアップサポート」を実施している。また、意見表明等支援事業の実践者や関係者向けに、養成・研修のためのテキスト「こどもアドボカシー活動の手引き」を発行した。

 調査は、児童相談所設置自治体79自治体を対象に、オンラインで実施された。回答票はメールで送信され、不明点は電話で確認された。実施期間は2024年10月2日から11月15日まで。回収率は77.2%(61自治体)であった。

 調査結果によると、事業を実施している自治体のうち、約7割が民間団体に委託していることがわかった。意見表明等支援員の属性については、約8割が女性で、年代は50代以上が最多であった。支援員の数は1~10人で活動しているとの回答が52.8%で最多であり、一時保護所や児童養護施設を中心に活動している自治体が多いことが明らかになった。

 事業の課題としては、支援員の不足、予算不足、関係機関との調整が2023年度に続き課題となっている。また、離島派遣や施設間での温度差の課題も指摘されている。育成・報酬については、事前・事後研修を実施している団体は5割にとどまり、研修体制が十分に整備されているとはいえない。報酬はほぼ全団体で支給されているが、弁護士への報酬額はそれ以外の者に比して高いことが示された。

 運営体制と連携では、児童福祉審議会での「こどもの意見表明を審議する権利擁護部会等」の設置については、8割以上の自治体が設置しているが、スーパーバイザー、トレーナー、コーディネーターの配置については、いずれの職種も5割を超えておらず、研修についても十分ではないことがわかった。

 今後の展望として、活動対象施設の拡充、支援員の確保、予算の増加に加え、研修体制の整備や連携体制の構築が喫緊の課題であることが示された。全国子どもアドボカシー協議会では、すでに実施している意見表明等支援員の養成研修の継続実施も含め、子供・若者の声を聴く環境を整えるための支援を検討していくとしている。

《神林七巳》

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