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【相談対応Q&A】部活動を地域移行してほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第172回のテーマは「部活動を地域移行してほしい」。

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【相談対応Q&A】部活動を地域移行してほしい
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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第172回のテーマは「部活動を地域移行してほしい」。

部活動の取り組み方に変化

 部活動は日本の中学校・高校において特別な役割を担ってきました。スポーツなどにおける技術の向上などはもちろん、集団で活動することで学ぶこともあります。ただ現在、部活動の取り組み方に変化が生じています。

 教師の働き方改革などと関連して部活動の地域移行が行われています。これまでの部活動の取り組み方には無理がありました。その種目の専門ではない教員が顧問になる、勤務時間外の指導が大きな負担になるなどです。また、少子化も関係しています。子供の数が少なくなり、1つの学校の規模が小さくなると、そのままでは存続することができない部が出てきてしまいます。

 そういったことの解消を目指し「部活動の地域移行」が行われています。スポーツ庁と文化庁が2022年12月に示したガイドラインに基づいて2023年度から3年間をかけて「公立中学校の休日の運動部」を優先して段階的に地域移行していくことに取り組んでいます。

 地域移行について先行実施をしている自治体などではメリット、デメリットがわかってきています。メリットとしては、人数が足りず実施できなかった部活動が可能になったこと、プロの指導によって技術が向上したこと、教職員の負担が減ったことなどです。一方、デメリットとしては、適任の指導者や活動場所の確保が難しいこと、子供の居場所が減ること、活動費や送迎などの家庭の負担が増えることなどがあります。

 メリット、デメリットがありますが、私は部活動の地域移行を今後、さらに進めていくべきだと考えています。現在の日本の教育(子育て)は、学校への依存度が非常に大きいです。中学校の部活動はそういったものの典型ということができます。以前、「学校は空気が目一杯入った風船のようなものだ」という表現を本で読み、非常に納得したことがあります。何らかのちょっとした刺激で学校という風船が破裂してしまう可能性があります。そういった危険な状態から少しでも正常(安全)な状態へ移していくことは必要でしょう。

部活動の地域移行は自治体など大きい地域の単位で進める

 さて、地域移行に関する具体的な対応として、学校独自での取り組みには難しさがあります。1校で取り組もうとしても、先ほどもあげた人材や場所などの問題が生じる可能性があります。スムーズな取り組みのためには、地域での合意形成が重要になります。市区町村単位か、もしくはもう少し大きい地域の単位で共同で話を進めていくことが望まれます。そういった形で取り組み、なるべくデメリットが出にくい形を作り上げていくと良いでしょう。その際、地域による違いにも考慮が必要です。都市部と地方部では、部活動の地域移行に関して、さまざまな状況に違いがあります。それぞれの地域の実情を考慮しながら、その地域に合った形を模索していくことが求められます。似たような地域での先行例を参考にして、取り組んでいくと良いでしょう。部活動の地域移行などの事務手続きなどが煩雑になり、違う仕事が増えてしまうようでは本末転倒です。「木を見て森を見ず」ということにならないよう、全体を見ながら進めていくことが大切でしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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