学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第166回のテーマは「先生が怒りっぽい」。
教員には感情のコントロールが求められる
「先生が怒りっぽい」という保護者や子供からの訴えは、直接その教員に伝えられることは少ないです。各種のアンケートに書かれたり、保護者の世間話の場において話題になったりするものです。
教員には、状況に応じて指導をする必要がありますし、法律で懲戒を与えることも認められています。ただ、そういった教員の言動が「怒りっぽい」と受け取られてしまうようでは「教育的効果は低い」と言えます。同じような状況でも教育効果が高い時は「あの先生は指導力がある」や「厳しいけれど良い先生だ」という表現になります。
近頃、「アンガーマネジメント」という言葉がよく聞かれます。感情をコントロールすることが仕事や周りとの関係性などを良好なものにしていくというものです。感情のコントロールは教員には特に求められるものです。指導が必要な状況において、熱くなってしまうと、きちんとした指導はできなくなる可能性が高まります。さらにそういった感情の高まりをきっかけとして不適切な行動(体罰、差別的な発言など)につながってしまうこともあります。
指導をしている途中に「そう言えば…」という言葉と共に、以前にもあった他の問題点などを話題にし、話が長くなることなども避けたいです。私は指導すべき事柄が発生した際、できるだけ付箋などに指導内容を箇条書きでメモをするようにしていました。その上でなるべく短い話で終えるようにしていました。そういった際、子供は賢いので、話を聞いているような姿をしていますが、実際はうわの空であることが多いです。「先生の話は長いなあ、早く終わらないかなあ」や「今日の給食は何かなあ」などと思いながら、嵐が過ぎるのを待っているような状況です。そういった状況では教育的効果は低いです。
叱る基準がぶれると教員への不信感が募る
少し違う視点でこのテーマを考えます。教員を含めた多くの人は、怒りやすい時とそうでない時があります。「感情が乱れやすい」と言い換えても良いかもしれません。たとえば、寝不足や疲れている時、気がかりなことがある時などは、人はちょっとしたことで怒りやすくなります。私は学期末などで忙しい時、寝不足などの時には「今日は寝不足だから、ちょっとしたことで怒らないようにするぞ」と心の中で何度も唱えながら一日を過ごしていました。教員側の都合(寝不足など)で子供が叱られるのは嫌だったからです。子供にとって叱られる基準がぶれることは教員への不信感にもつながります。
学校という組織で考えた場合、教員がストレスの少ない状態で仕事ができるように環境を整えることは大切なことです。これはさまざまなレベルでの取組みがあります。無駄な会議などを減らすこともそうですし、職員室の一角にリラックスをしてお茶を飲むことができるようなスペースを作ることなどもそうでしょう。そういったことをしていくことが、教員にとって良い職場になり、それが子供にとっても良い学校へとつながっていくのだと思います。
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