学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第139回のテーマは「夏休みにGIGA端末で取り組む宿題を多くしてほしい」。
生成AIとの関わり方
このところ、学校での夏休みの宿題のあり方が話題となっています。チャットGPTなど生成AIの扱いについてです。児童・生徒が生成AIとどのように関わっていくのかということが色々な場所で議論されています。文科省から示されたものは、良さは認めながらも現状では使用に関して限定的になるというものです。読書感想文やレポートなどで使用することは不正行為となると示しています。
私が普段教えている大学の授業においても同様の難しさがあります。小中学生以上にデジタル機器を日常的に使用している大学生は、生成AIを活用している人もいます。大学教員としては、生成AIという存在があることを踏まえて、課題などを出していく必要があるのだと考えています。
チャットGPTのように新しいものが出てくることで、新たに考えるべきことが出てきます。これはデジタルに関することだけでなく、どの分野でも言えることです。何か新しいものが出てくると、問題点などを指摘し、反対する人もいます。そういった人の指摘はもっともですが、問題点をケアすることも含めて、先に進んでいくために何をすべきなのかを考えていくことが大事なのだと思います。
学校教育で大事にしたいこと
そういったことと関連し、夏休みを前に学校に「夏休みにGIGA端末で取り組む宿題を多くしてほしい」というリクエストがくる可能性があります。日本中の子供の手元にGIGA端末があります。文科省は家庭への持ち帰りなどを推奨しています。そのような状況において、個別最適な学びを実現していくために、夏休みなどもGIGA端末を効果的に使っていくことは大切でしょう。
夏休みなどの宿題においてタブレット/PCなどを使用することは自然な流れなのですが、そこで考えたいことがあります。子供の周りだけでなく、大人の世界でも、デジタル機器を使用することは日常です。私自身、文章を書くことは仕事の一部ですが、ほとんどがパソコンを使って書いています。ペンや鉛筆を使って書くことは本当に少ないです。1日に1度も筆記具を触らない日もあります。
そういった状況を踏まえると、学校教育においては、あえてタブレット/PCを使わないようなことも大事になのではないかと思います。原稿用紙に手書きで書くこと、習字(硬筆、毛筆)をすること、実際にモノ(昆虫や植物など)を見ながらスケッチすることなどは、昔とは少し意味合いが違ってきているのではと思います。デジタル機器が日常にある今の社会状況だからこそ、学校としては「手で行うこと」を大事にしていく必要があるのではないかと思います。
また、先ほど話題にしたチャットGPTは使い方によっては「考えること」を人間の代わりにしてくれます。そういったものが一般的に使用できるような状況であるからこそ「人間が自分の頭で考えること」がこれまでよりも大事になってくるのだと思います。特に子供のころに自分の頭で考えるということが重要になってくるのだと思います。
学校としては、デジタル機器が普及していくという社会の流れの中でどういった力を子供に身に付けたいのかということを今一度考え、日々の学校教育活動に取り組んでいくことが大切でしょう。
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