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【クレーム対応Q&A】もっとGIGA端末を活用して

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第135回のテーマは「もっとGIGA端末を活用してほしい」。

事例 その他
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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第135回のテーマは「もっとGIGA端末を活用してほしい」。

GIGA端末の活用率により、
学びの差が発生

 日本における新型コロナウイルスの状況は「アフターコロナ」に向けて、進んでいます。一時のかなり混乱した状況から、コロナ前とまではいきませんが、通常の状況に戻りつつあるように感じます。この3年間で学校を取り巻く状況にさまざまな変化がありました。色々な変化があった中でももっともインパクトの大きかったものは「GIGAスクール構想」ではないかと私は感じています。

 一人一台端末(タブレット/PC)があることによって、子供の学びが大きく変わりました。日本の教育は、明治以降、基本的には「教科書、ノート、黒板」を使った学びでした。それが、GIGAスクール構想により、個別最適な学びができる環境へと変わっていきました。

 ただ懸念されることもあります。それは色々な形で、学びにおける差が生じていることです。先ほども書いた「教科書、ノート、黒板」を使った従来の学びの場合、その質のばらつきは小さなものでした。それが、GIGA端末を使用した学びの場合、質に大きなばらつきが生じてしまっています。その差の原因は、学級(担任)によるもの、学校によるもの、自治体(市区町村)によるものがあります。特に大きな問題だと私が感じているものが「自治体(市区町村)」による差です。GIGA端末の家庭への持ち帰りなどに関しては、自治体(市区町村)の教育委員会が決めていることが多いです。

GIGA端末の家庭への持ち帰り状況

 文科省の調査(2022年8月時点)によると、GIGA端末の家庭への持ち帰りについて、小学校では「ほぼ毎日」26.1%、「週1回以上」は計48.4%、中学校では「ほぼ毎日」31.3%、「週1回以上」は計46.3%となっています。小・中学校ともに週1回以上持ち帰り学習をしている割合は半数以下となっています。また、持ち帰り学習をほぼ毎日行なっていると回答した割合が多かった都道府県は、小学校が東京都69.1%、岐阜県54.6%、広島県53.2%、中学校は東京都65.2%、岐阜県61.7%、奈良県61.4%となっています。

 自治体による差が大きいことが文科省の調査からもわかります。持ち帰りをさせていない理由としては、さまざまなトラブルの発生を懸念してということがあります。ただこれは問題の先送りでしかなく、いかにタブレット/PC(スマホも含めて)などと関わっていくのかを学ぶことは、現代を生きる人たち、特に子供たちにとって非常に重要な内容です。活用する中でどういった関わり方が良いのかを子供と一緒に探っていくことが望ましいことです。

 自治体によってGIGA端末の持ち帰りの状況に違いがあることは、少し強い言い方をすると「子供の学習権」にも関わることなのではと私は感じています。憲法の第26条には「ひとしく教育を受ける権利を有する」とあります。文科省も推奨している「GIGA端末の家庭への持ち帰り」を、自治体や学校の都合でさせないことは、子供の学びの権利を侵害していると捉えることもできるのではということです。GIGA端末の家庭への持ち帰りに関しては、すでに取り組んでいる自治体がたくさんあり、ノウハウが蓄積されています。まだ家庭への持ち帰りをさせていない自治体や学校の関係者は、そういった事例から大いに学ぶ必要があると思います。GIGAスクール構想に関しては、2019年度および2020年度の予算で約4,600億円のコスト(税金)がかけられています。そういったことも踏まえるとGIGA端末の有効な活用はとても大事なことでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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