学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第111回のテーマは「小学校卒業式の服装が年々派手になっている。華美な服装を禁止してほしい」。
卒業式の服装
公立小学校では、制服が無いことが多いです。そういったことと関連し、この時期に話題となることに「卒業式の服装」があります。制服の無い公立小学校では、卒業式でそれぞれの家庭で服装を選ぶことになります。その服装が派手になっている学校、地域があります。そういった学校や地域では、保護者から学校に対して何らかの規制、ルール等を示してほしいという相談や要望が学校に寄せられることがあります。
派手と言われるものは「袴」を意味していることが多いです。子供、特に女子が卒業式で袴を着ることはこの15年位で増えてきたように思います。大学生の卒業式では、女子学生が袴で参加するケースがよく見られます。そういったものに影響を受けてのことと考えられます。
色々な考え方があるのですが、私は学校で一律に卒業式の服装を決めることには反対の立場です。学校に対して「何らかの規制をしてほしい」という保護者の思いとしては、卒業式において自分の子供が自分の服装について嫌な思いをしてほしくないというものです。考え方としてはそういったものもわからなくはないのですが、こういった意見を受け入れてしまうことで、学校はそれぞれの人(家庭)が持っている権利を侵害してしまうことにもつながりかねません。
学校が決めるのはどの範囲まで?
今回の卒業式の服装だけでなく、それ以外のことにも当てはまるのですが、学校が決めるのはどの範囲までが良いのかということはよく話題になります。中学校の「校則」がそれにあたります。中学校が荒れていた時代の名残から、子供に関することを事細かく規定をしている校則があります。ある程度はそういったものも必要なのですが、それが必要以上になってしまうことで弊害も出てきます。
ルール等を作ってしまった方が楽な面があります。高校の制服に関して、校則で決められていない所もあります。そういった高校では、子供が自分で色々と考え、服装を決め、登校しています。制服が無いと、子供がとんでもない服装をするのではないかという心配をする大人(親、教員等)もいるのですが、そういったことにはならないことが多いようです。
卒業式の服装は各家庭で判断すべき
小学校の卒業式における袴等も基本的には学校が決めることではないことです。「袴を着て良い」や「中学の制服で」と学校が決めることではなく、各家庭で判断すべきものです。先程の校則の例ではありませんが、学校が決めることやすべきことが増えていったという過去があります。本来の学校の役割以上のものを学校が担ってしまったものです。現在の部活の問題等がそれにあたります。教育的配慮等からそういったことをする場合もあるのですが、それによって学校が本来すべきことに支障をきたすこともあります。
教員の働き方改革等と関連し、学校の役割、教師の役割等が話題になることがあります。改めて、学校の役割、家庭の役割を考え、きちんと分けていくことが必要です。今回の「卒業式の服装を決めること」等は、まさに家庭の役割です。学校のあり方、家庭のあり方についてきちんと考え、整理していくことが大切でしょう。
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