全国学校図書館協議会の調査(第66回学校読書調査概要)によると、全国の高校生のうち、1か月間に本を1冊も読まなかった生徒の割合は、49.8%と高い数値となっている。一方、2022年度から新科目「総合的な探究の時間」の設置により、生徒自らが興味関心のあるテーマを見いだし、図書館等を活用しながら自発的に学習を進めていくための授業が求められている。文部科学省では、こうした背景から「学校図書館の活性化に向けた調査研究委託事業」を実施。2021年度同事業を、清教学園中・高等学校に委託した。
清教学園中・高等学校は、同事業において、「探究学習と図書館活用のギャップを埋める授業実践の検討」をテーマに研究を行い、調査情報を公表した。
はじめに、どのような理由で高校生・高校教員が図書館を活用できないのかを明らかにするべく、探究学習を履修した既卒生や2020年度に授業を担当した教員へ事前の聞き取り調査を実施。調査の結果から「教員主体のテーマ設定では、生徒はわざわざ本を読んで学ぶ意欲が湧かない。簡単にまとめられているWeb資料に流れる」「本当に興味があるテーマであれば、本を読んで学ぶ。著者に手紙を送り直接取材もしている」といった生徒の意見が得られた。担当教員からは、「図書館を使うことは授業時間の制約から難しい」「読書を推奨するが、たくさんの文献を読み込む学習スタイルが合うのは一部の生徒。多くの生徒にとってはハードルが高い」等の意見があがった。
次に、事前調査から仮説1「生徒主体のテーマ設定であるほど、探究学習に対する学習意欲が向上し、生徒は図書館を活用するのではないか」、仮説2「仮説1に基づき授業を設計し、さらに図書館スタッフから図書探索の支援を受ければ、図書館の利用統計データにも変化が現れるのではないか」の2つの仮設を設定。高2生に対して、1年間、カリキュラム改定と授業改善施策を行い、カリキュラムを改定していない高1生との各種データ(授業評価アンケート・利用統計・参考文献図書冊数等)を比較した。
その結果、高2生のほうが、「研究に興味をもって取り組むことができたか」「研究テーマに関する知識の理解」等のアンケート設問で学習意欲が向上し、図書館を活用して学ぶ割合が高くなった。中でも、図書館スタッフ(司書教諭)が授業を担当したクラスでは、70%以上の生徒が3冊以上の図書資料を参考にし、さらに20%近くが「自分の研究に必用不可欠な図書資料があった」と回答。高2学年全体の1人あたり年間貸出冊数(ノンフィクション)は、過去のデータと比較して約5倍に向上した。
この研究事業を担当した司書教諭、山﨑勇気氏は、「テーマ設定段階から生徒と関わること。そこから複数の資料を提供して、生徒の探究の可能性を拡げてあげること。このような、生徒の潜在的な知的好奇心に問いかけるレファレンス(資料調査業務)こそが、探究学習における図書館の役割です。司書・司書教諭による『問いかけ』『資料提供』という関わりによって、生徒は図書館という場所を信頼します。その信頼感が、しぜんと貸出冊数といったデータにも繋がるのだと思います」とコメントを寄せている。