家庭訪問で得られる情報は多い
今回のテーマは「家庭訪問」です。私は、家庭訪問を「した」ことも、「された」こともあります。教師の立場として、そのメリットが大きいことは理解しています。ただ、訪問される側の家庭にさまざまな負担があることも事実です。
家庭訪問は、その子どもの家庭での暮らしがわかるとても良いチャンスで、得られる情報がたくさんあります。教師としては、メリットがとても多いものです。家の中を見ることで、親がどのようなことに関心があるのかということがわかります。たとえば、目に付く所に地図(日本地図や世界地図)が置いてあれば、ニュースで地名などが出た時に、すぐに地図で確認をしていることが想像できます。リビングなどに本棚があり、そこに子ども向けの図鑑などがあれば、そういったものをよく見ていることになります。私の体感では、学校の子どもの机やロッカーの中の整頓の状態は、家の状態とほぼ比例しています。家庭で整頓を意識した生活をしているとそれが身に付いていることが多くなるのでしょう。
家庭訪問は減少傾向に
しかし、家庭(保護者)から見ると、否定的な意見があるのも理解できます。「共働きで時間調整が大変」「家が狭く、担任を通すような場所が無い」「室内に見られたくないものがある」「片付けが面倒」「学校で行う個人面談で良いのでは」「隣の学校はやっていない」などです。
全体の傾向としては、家庭訪問は減っています。実際の行う場合は、時間がかかります。クラスの人数にもよりますが、平日の午後を全部使って、1週間程度かかるでしょう。限られた時間の中で何を重視するのかを考え、家庭訪問を無くす方向になった学校も多いです。「家庭訪問」についての実施の有無については、それぞれの担任が個人で決められるものではありません。学校がPTAなどとも相談のうえ、次年度以降の家庭訪問について決めていくものです。それなので、各担任としては、その学校のやり方通りでやることになります。
難色を示された場合は折衷案を
実際、家庭訪問を実施する際、難しいのが「自宅以外の場所(近所の公園、カフェなど)でお願いしたい」や「日程を決めたのに、何度も急にキャンセルになる」というものです。私も小学校の教員のころ、実際にどちらも経験したことがあります。こういった場合、あまり柔軟な対応をしてしまうと「あのクラス(担任)だけ不公平だ」という批判を受けることがあります。保護者同士はさまざまな形で情報が共有されています。家庭訪問のことだけではありませんが、学校や教師に関する色々なことを伝え合っています。それ自体は悪いことではありません。忘れ物を防ぐことにつながることもあります。ただどうしても噂のようにあることないことが付け加えられながら、情報が流れていくことが多いのも事実です。
それなので、基本的には「家庭を訪問させてほしい」ということを家庭訪問のねらいと共に伝えます。折衷案(落とし所)として、「玄関先でどうですか?」という提案を私はしていました。玄関先であれば、親の負担(部屋を片付けることなど)は大きく減ります。家庭訪問に難色を示した家庭でも「玄関先ならば…」と態度を変えてくれたケースがありました。また、そういった情報を管理職に伝えることや兄弟の在籍しているクラスの担任に伝えることも重要です。